ソニーがロボット技術を再結集する真の狙い 平井一夫社長が語ったイノベーション戦略
――ゲーム領域ではVRディスプレーの発売が話題です。この分野でもっとも多くの製品を出荷し、もっとも多くの知見がPSVRに集まる可能性が高そうです。これをほかのジャンルにも生かす計画は?
現在はゲームから始めていますが、VR全体で言えばゲーム以外の可能性のほうが大きいでしょう。ソニーはプレイステーションだけでなく、撮影、編集、コンテンツ制作など、VRのバリューチェーン(価値連鎖)全体に対してマネタイズできる事業を持っています。何度かエレクトロニクス部門とエンターテインメント部門のトップが集まり、VRをどのように事業に生かすのか議論しています。また、もうひとつはVRのラストワンインチ、PSVRのハードウエアデザイン、設計力、ものづくりは他社に対して優れた面を持っていると思います。
――スマートフォン革命も落ち着き、業界・産業としての形が見えてきたと思います。今後、ソニー全体を考えたとき、次のイノベーションの方向は徐々に見えてきているでしょうか。
確かにスマートフォンのイノベーションは落ち着いてきましたが、“通信機能を持つ”ことに大きな付加価値があるという面で、スマホ革命はまだまだ多くのデバイスに今後も広がっていくでしょう。その環境の中で、ロボティクスやAIが伸びると考えています。
イメージセンサーの半導体事業は、スマートフォンカメラの複眼化の流れもあり、監視カメラ、衛星カメラ、車載カメラなど、まだまだ事業ジャンルとして伸びそうです。プレイステーションも、ハードウエアの売り上げが伸びたことで、ネットワークサービスとして事業をさらに大きく、基盤としてしっかりとしたものにしていける切り口、発展性があります。SPE(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)とSME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)も特に音楽事業が底打ちして、今後はストリーミングとともに伸びる予想を立てています。
新コンセプトの商品は「ワンオフ」では作らない
――その先にあるのは、“ラストワンインチ”商品を、エンターテインメントAIでつないでいくプラットフォーム化でしょうか?
もちろん、そうしたビッグピクチャーも描いています。まず最初に、そうしたAIサービスとの出入り口を構想しておかないと、ロボットを出したけれど、第1世代は次のAIサービスと連動しないといった齟齬(そご)が起きてしまいます。新コンセプトの商品は“ワンオフ(その場限り)”の商品として作るのではなく、将来持続的にサービスと連動できるよう、社内外のパートナーと調整しながら事業を進めるよう注意深く進めています。
製品メーカーとしてのブランドを強化するには、すばらしい製品を作るだけではなく、デザインやコンセプトに継続的に投資を行うことと、その商品を買ってくれた、選んでくれた顧客が投資した商品の価値を守る必要があります。ですから、将来ビッグピクチャーにたどり着いた際にも、初期に投資した消費者が仲間外れにならないようにしていきます。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら