ソニーがロボット技術を再結集する真の狙い 平井一夫社長が語ったイノベーション戦略

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外部に向けて“発信”するのではなく、社内の取り組みとして徹底して実行していく。ここ数年、その結果としていくつかのプロダクトが生まれてきたことで、“実際にやれば出る”ことを実感したことで、組織全体で“次は俺も”というポジティブスパイラルに入っています。(社長就任後)最初の3年は構造改革を徹底しましたが、その中でも上記のような取り組み、投資を続けた結果が昨年ぐらいから出たきた。このことが社内の雰囲気を大きく改善しています。

また、テレビの黒字化も時間はかかりましたが、やり遂げることができました。テレビやオーディオ、カメラなどの事業は、全価格レンジで勝負するのではなく、ハイエンドの高付加価値商品だけで勝負することを徹底している。その結果が出始めました。

――昨期は、エレクトロニクスの復活が利益を押し上げましたが、来期は株主資本利益率(ROE)10%、営業利益5000億の中期目標を掲げています。確かに各事業のバランスシートは整ってきた印象ですが、エレクトロニクス分野でゲーム以外に成長余力がありそうな分野がないようにも思えます。ブラビアやアルファ、ウォークマンなどのブランドにも成長余力はあるとお考えですか?

伝統的にソニーが強いエレキ分野は、来期以降、従来と同じぐらいの比重での利益貢献を引き続き期待しています。一方、エレクトロニクス分野で成長を期待しているのは、経営説明会でも言及した“ラストワンインチ”。どんなにすばらしいサービスがあっても、最終的にそこにつながるには何らかのデバイスが必要です。

よりよいデバイスを開発するには、技術力とデザイン力といった、これまで蓄えてきた資産に加え、ロボティクスやAI(人口知能)への投資によって強化できると考えています。そしてそれらを、生活空間の中でさまざまな分野で活用していこうと考えています。

これらに加えて、前述した“規模を大きく追わずに付加価値を追求する”というコンセプトを徹底することで目標が達成できると考えています。たとえば、テレビは成熟したジャンルですが、4Kテレビへの移行はまだしばらく続きますし、将来も決してテレビという商品はなくなりませんから高収益製品に集中して取り組んで行きます。

そして、(CESで技術展示を行った新方式のテレビバックライトなどのように)同じカテゴリの中でも確信的技術を投入していくことで、収益を改善できると思います。感動によって消費者を刺激する。それこそがソニー製品の差異化ポイントで、価格競争には参加しません。

ソニー製品は「感性」価値で勝負していく

――平井社長の言う「ラストワンインチ」ですが、過去10年をふり返ると、さまざまなアプリケーションがクラウドに吸い込まれる一方、クラウドに接続するデバイスは、汎用でシンプルな製品が好まれ、ソニーだけでなく従来型の家電製品の価値が相対的に下がっていきました。この流れの中で「SONY」製品がラストワンインチを担うのに最適であるという自信はどこから来るのでしょうか?

それは、ものづくりの知識であり、デザイン力であり、機能的な価値です。(クラウドにアプリケーションが入っていく中で)ラストワンインチのデバイスには、ユーザーがこうあってほしいという“感性”領域の価値が求められています。同じ機能だとしても、他人に見せびらかしたいという価値です。

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