人間の欲望を、すって味噌にしてみたら 禅世界の超大物”白隠”が描く、極楽と地獄

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白隠は何百もの達磨図を描いている。「若いときに描いたものは目が左のほうを見ている。晩年になると反対の方向を見るようになり、目も大きくなる。年齢とともに、人格も思想も変化していることの表れ」と芳澤教授は言う。展示室には達磨ばかりのコーナーが設けられ、時代も表情もさまざまな達磨を見比べることができる。

極楽もある、地獄もある

最後に紹介するのは、寺外初公開の≪地獄極楽変相図≫。

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≪地獄極楽変相図≫ 清梵寺蔵(静岡県) 清梵寺では毎年7月の地蔵尊縁日のとき、この図を掛けている。

罪人を調べて裁きを下す閻魔大王が中央に座り、周りに地獄の責め苦の場面がいくつも描かれている。白い札には、どんな人が地獄に落ちるかが書かれる予定だったが、何も書かれていないから、絵は未完成とわかる。

ただ1つ、左下の1枚だけ、「世間メカケモチ」となっていて、妾を持つ男がヘビにぐるぐる巻きにされている。極楽と地獄について白隠は、「極楽もある、地獄もある。同じものの違う表れ方なのだ」と考えていたという。

≪動中工夫≫ 個人蔵
「動中の工夫、静中に勝ること百千億倍」

そのほか、悟りを得たあとも物乞いの姿で修行を続ける師を描いた《大燈国師図》、「動きながら工夫しろ」と教えてくれる《動中工夫》など、心に響いてくる1点に出会える展覧会だ。渋谷ではあまり見慣れない、法衣をまとったお坊さんたちも会場を訪れている。

「時代も空間も超えて、私たちに訴えてくるものがある。外国の人にもわかる、すごい力を持っている。深く読み取ろうとすれば、いくらでも深められます。ぜひご自分のマナコで見て、ご自分の頭で考えてください。必ず百人百様のもの、ご自分の何かを発見できます」と、芳澤教授は話している。

前期の展示は21日まで。ここで紹介した作品は後期にも展示される。

 

 

 

 

 

 


「白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ」
開催中~2月24日
Bunkamuraザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-4-1 Bunkamura B1F
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00~19:00(金・土曜は21:00まで、入館は閉館の30分前まで)
会期中無休
一般1400円

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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