離婚後の「子の幸せ」を"第三者"に頼る親たち 「面会交流」の現場がいま、様変わりしている

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家族間の紛争や男女問題に詳しい専門家で、ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士は「子と別居しても子に会いたいという親が増えた一方で、当事者間で円滑に面会交流のための協議をすることができないケースが増えている」と指摘します。

「背景としてよく言われているのは、少子化や夫の育児参加です。一人っ子であれば、そこに対し妻も夫も愛情を注ぐことになるので、それだけ双方とも子と離れがたくなります。すると、面会交流の条件で折り合いがつきにくくなるのです」(寺林弁護士)

また、寺林弁護士は「あくまでも私の推測ですが」と前置きしたうえで、次のようにも語ります。

「女性の社会的な地位が向上したことに伴って、妻が夫に対して我慢しなくなったということもあげられるのではないかと思います。子どもが会うのは仕方ないにしても『なんであんな男と私が、今さら会わなきゃならないの』と言える風潮が、日本でも出てきたのではないでしょうか。

これに加え、核家族化も影響していると思います。夫婦が子の受け渡しなどを行えない場合に、双方の両親(子にとっては祖父母)がこれを補えればいいのですが、高齢であったり遠方に住んでいたりなどの事情で、協力を得にくいということが考えられます」

かかわる大人の数が増えるほど、面会交流は難航する

一方で、現在子育てをしている親世代に問題が起きた時に、その親たち(子供にとっては祖父母)が、過度に「口出し」「干渉」をすることで、余計に問題を複雑化させる場合もあります。「ウィーズ」の羽賀晃理事長も、実際「かかわる大人の数が増えれば増えるほど、面会交流は難航する」という実感があるそうです。

「そもそも夫婦は、激しい葛藤の末に離婚しており、面会交流についての調停が成立してもきちんと履行されないケースや、養育費の未払いにより面会交流が実現しないケース、男女間の葛藤がそのまま親としての葛藤に直結しているケースなど、さまざまです」(羽賀理事長)

最近では、当事者間での面会交流の調整が困難と思われるケースについて、裁判所が、第三者機関の利用を検討するよう促すパターンも出てきているのだそう。そんなわけで、面会交流をとりまく環境、面会交流の形態が、このところ激変しているのです。

「離婚した親が、面会交流を求める調停の申し立ては2013年に1万件を超え、この10年間で約2.5~3倍に達しています。ひと昔前に比べれば、別居している親がより積極的にわが子に会うための行動を起こしているということだと思います」(羽賀理事長)

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