「元気」で「長生き」できる都道府県はどこか? 「長寿=健康」とは限らない、これだけの理由
一方、平均寿命が長いからと言って、健康寿命も長いわけではない。長寿日本一の長野県。男性の平均寿命は80.88歳、女性は87.18歳とともに全国1位で、「元気なお年寄りが多い」というイメージがあるが、実は健康寿命は男性71.45歳で18位、女性74.73歳で16位と決してトップクラスではない。平均寿命から健康寿命をマイナスした期間を「健康ではない期間=不健康期間」とすると、長野男性は9.43年で全国44番目に長く、長野女性は12.45年で全国平均よりも長い。
健康寿命に差が出る理由
こうした健康寿命の差はどうして生まれるのか? それを知る前にまず、健康寿命はどのように算出されているかを理解する必要がある。実は健康寿命は、国民生活基礎調査の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」という質問に対して、「いいえ」と回答した人を健康と見なして、性別・年齢別の人口動態と死亡率をもとに、サリバン法という規定の計算式に基づいて算出される。つまり、健康寿命とは、「自分は健康である」という自己申告に基づいた主観的な指標ということだ。
そのため、特に健康状態を損ねる重大疾病の影響を受けやすい。たとえば日本人の死因のベスト3である、がん・脳卒中・心疾患などに罹患していれば、治療も長期化しやすく、それだけ不健康期間が長引く。さらに、心と体の状態も健康寿命を左右する。気分が乗らない、優れないといった気分障害・うつ状態があれば、健康でないと感じやすい。また、足腰や肩の痛みがあると健康という自覚を持ちにくい。
厚生労働省の研究班のメンバーで公衆衛生学が専門の、浜松医科大学・健康社会医学の尾島俊之教授は「日本人の死因の1位であるがんと、要介護の最も大きな原因である脳卒中の罹患率・死亡率の違いが、都道府県間の健康寿命の差に大きな影響を与える。さらに、重篤な病気を患っていなくても、うつなど精神的な病気や体の痛みなど肉体的な不具合を感じている人が多ければ、それもまた健康寿命の差となって表れる」と指摘する。
この指摘に基づき、健康寿命を比較してみると、たとえば、がんと脳血管疾患の死亡率が全国で最も低い沖縄県(※平成26年人口動態統計による)の健康寿命は、男性72.14歳で2位だ。一方、がんと脳血管疾患の死亡率がともに高い青森県は、健康寿命が男性70.29歳で44位、平均寿命に至っては男女ともに都道府県の中で最も短い。
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