新人育成に悩む人が陥りがちな「2つの罠」 相手の人間育成までやる必要はありません!

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「なんて冷たい人なの!」と若い私は憤慨こそすれ、まったく納得できませんでした。その後、しばらくして、私が悩んでいるのをよそに、彼女が彼女独自の手法でその問題を解決したと聞きました。そして、彼女は自ら望んで異動し、私と彼女に距離ができた後、彼女はもうその距離を縮めてこようとはしませんでした。

そうなってみて初めて、「ああ、教育担当だからって、彼女のプライベートまでなんとかしてあげねばと随分とおこがましいことを考えていた」と私はようやく思え、上長の言葉がよみがえってきたのです。

上長と責任をシェア

あなたの場合も、上長に相談したとありますが、その上長は「愚痴を言っている」と思っているかもしれません。まずは、彼女の仕事上の特性をとらえて現状報告し、上長とゴール設定すると良いでしょう。いつまでに、どのような状態になっていれば合格か、話し合うのです。そのために、どこまで手を出すか、面倒を見るか、範囲を明確にし、上長と責任をシェアしましょう。

仕事が終わっていないのに早く帰ってしまう、納期を守らない、といった態度にイライラするよりも、ゴールからさかのぼって、それが重要な仕事ならば、どのように重要性を伝え、完了させるべきか、を考えてコミュニケーションしたほうが、精神衛生上もずっと楽になるはず。同じ質問を何度もする、というのだって、あなたを「便利な情報源」「面倒見てくれるお姉さん」くらいにしか思っていないからこその行動かもしれない。彼女の面倒を徹底的に見て思ったように育て上げることは、ほとんど不可能だし、必要もないのです。

もっと言うと、会社もそれほど大きな成果を期待していません。だから、ざっくりとした仕事として任され、「困ったら助けてあげてね」くらいの指令しか受けていないのです。そう考えれば、きっと後輩だけにまっすぐ注がれていた視界が、ぱぁっと開けていろいろ見えてくるはずです。

「これは業務」と考えて、彼女や上司との間での利害関係を明確にしてしまえば、「先輩として尊敬されていない気がする」とか「彼女の顔色ばかりうかがっていてバカみたい」とか思わなくて済むようになるように思います。

後輩の「良き母」になる必要なんてないんですよ。彼女との関係をちょっと引いて眺めてみたら、あなたの気持ちも少しは軽くなると思います。深呼吸して、冷静になりましょう。

堂薗 稚子 ACT3代表取締役

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どうぞの わかこ / Wakako Dozono

1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として多くの企業を担当し、数々の営業表彰を受ける。管理職として、多様な雇用形態の組織の立ち上げやマネジメント、『リクルートブック』『就職ジャーナル』副編集長などを経験。2004年第1子出産。2007年当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用され、事業責任者、「リクナビ派遣」編集長を務める。2010年に第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、社内外女性のメンターを務めつつ、ワーキングマザーで構成された営業組織の立ち上げ、マネジメントを担当し、彼女たちの活躍を現場で強く推進した。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、2013年退職。株式会社ACT3設立、代表取締役。女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行っている。2013年2月、リクルート在籍時に東洋経済オンライン「ワーキングマザーサバイバル」連載に登場。FBのいいね!数が6000を超えるなど、話題となった。

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