イギリス離脱決定で深まる「EU崩壊」の危機 EU主要国に「離脱の連鎖」が広がる懸念

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ドイツに次いで、2014年のEUへの拠出金の負担比率が大きいのは、フランス15.8%(約2.5兆円)、イタリア11.9%(約1.9兆円)、英国10.6%(約1.7兆円)、スペイン8.4%(約1.3兆円)である。EUには28カ国が加盟しているが、拠出額の大きい上位5カ国で、68.6%を負担していることになる。

もし、EUから英国が抜けると、残ってEUを支える主要国の負担はさらに重くなる。そうなると、EU主要国に、離脱の連鎖が起こる恐れもある。EUは、経済力の強い国が弱い国を支える構造になっているが、負担金が大きい国には、それに対する不満が蓄積している。

援助してもらっているのに反EU・反ドイツという皮肉

EUという仕組みの致命的な問題は、支援金をもらって支えられているギリシャのような国にも、反EU・反ドイツ感情が広がっているところにある。

2015年1月にギリシャに誕生した急進左派連合チプラス政権は緊縮財政を求めるEUの盟主ドイツに公然と攻撃的発言を繰り返した。債務まみれのギリシャを支援し続けているEU、その中核にあって資金を出し続けているのがドイツであるにもかかわらず、緊縮財政を迫るEUとドイツを非難することで、チプラス政権は選挙に勝ち、政権を握った。「ギリシャ人の誇りを守るために(EUが押し付ける)緊縮策を放棄する」を公約としていた。

EUが「緊縮策を受け入れなければ支援を継続しない」と態度を硬化させたため、チプラス首相は最終的には公約違反であることを認めつつ、緊縮策の受け入れを決定した。それで、ギリシャ支援は続けられ、ギリシャの財政問題は、小康状態を保っている。ただし、ギリシャ人の心の中には、EU・ドイツへの反感が深く刻まれることになった。

英国のEU離脱は、氷山の一角でしかない。EUを支える国にもEUに支えられる国にも、反EU感情が広がりつつあるので、EU崩壊の危機は、これから深まっていくと言わざるを得ない。

窪田 真之 楽天証券経済研究所長兼チーフ・ストラテジスト

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くぼた まさゆき

くぼた・まさゆき 1984年慶応義塾大学経済学部卒業。大和住銀投信投資顧問などで日本株ファンドマネージャー歴25年。2012年2月より現職。企業会計基準委員会の専門委員・内閣府「女性が輝く先進企業表彰」選考委員など歴任。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)、「クイズ 会計がわかる70題」(中央経済社)など多数。

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