とは言っても、英国民の反EU感情の強さが予想以上であることがわかってしまった今、EUに対して、英国の国益を前面に押し出した交渉を行うことが求められる。
英国のEU離脱は、主要国に連鎖を起こしかねない
一方、EUサイドでも、英国離脱の条件交渉は難問だ。EU離脱後の英国に、EUに留まっていたときと同じ特典を、やすやすと与えるわけには行かない。それを許すと、EU主要国に、EUからの離脱連鎖を起こすことになりかねないからだ。
そうは言っても、英国とEUが、重要な貿易パートナーである事実は変わらない。EUと英国の経済的なつながりが薄くなると、ダメージを受けるのは、英国だけではない。EUも同じだ。英国を特別待遇していると見られない範囲で、なるべく現在の英国との経済関係が変わらないような条件を決めなければならない。
反EU運動が勢いを増しつつあるのは、英国だけでない。フランス・イタリア・スペインなどEUを支える主要国にEUへの反感が広がりつつある。英国のEU離脱が決まれば、主要国に離脱連鎖が起こりかねない。
その影響がどう表れるか。最初に、注目されるのが6月26日に実施されるスペイン総選挙の結果だ。EUに押し付けられている緊縮財政に反発する急伸左派のポデモスが議席を伸ばすことが予想されている。国民党が過半数を取れず、ポデモスが第2党に浮上すると、スペインでも反EU機運が高まり、スペインの財政規律が緩む可能性もある。
フランスでは、反移民、反EUを掲げる極右政党、国民戦線(FN)が勢力を伸ばしている。FNのルペン党首は、「政権を取ればEU離脱を問う国民投票を実施する」と約束している。
イタリアではEUに懐疑的な新興勢力「五つ星」が台頭している。6月19日に実施された統一地方選で、ローマ市長とトリノ市長に、五つ星に所属する女性候補が当選して話題となった。
英国・フランス・イタリア・スペインに共通するEUへの不満は、EUからさまざまな規制を押し付けられること、EU域内から流入する移民を規制できないことにある。彼らは批判の矛先は、EUを主導しているドイツに向けられている。ただし、そのドイツ国民にも、反EU感情はある。
EUに最大の拠出金を提供し、EUの財政を支えているのはドイツである。ドイツは、2014年のEU総予算1329億ユーロ(約15.7兆円)の21.9%(約3.4兆円)を拠出している。ドイツ人は「我々の税金を使ってなぜギリシャや東欧諸国を支援しなければならないのか」とフラストレーションを積もらせている。移民増加への警戒もあり、反移民を掲げる民族主義政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を広げている。
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