空港を見れば、その国の実力が如実にわかる 市民のセンスの根源は社会システムにある

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今週、シドニーに来る直前まで香港にいたのですが、香港の電子無人入国審査は、驚くことにマイレージカードのステータスを持っていれば、誰でも電子入国登録が可能で、事前のオンライン・スクリーニングなども一切ありません。

また、香港から中国本土の深センに陸路で向かうと、自動車から一歩も出ることなく、入国審査も税関検査も終わります。もちろん、欧州内シェンゲン協定内の国家間移動であれば、入国審査も税関検査もなにもありません。そして、その協定国は年々増えており、おそらく10年以内にはロシアも含まれると考えられます。

入国サービスは「新しいステージ」に入っている

一体、21世紀の入国審査とは、なんなのでしょうか?

移民問題が各国で大きくクローズアップされる中、ゲストに対する「あたらしい入国サービス」は、ここ数年であたらしいステージに入ったと感じています。言い換えれば、顧客満足度を高めることができない空港を持つ国は、今後成長することは見込めないということなのでしょう。

さて、今週シドニーでは、ViVid Sydneyというイベントが、町中で開催されています。Vividは、アイデアと映像と音楽、そして照明の100万人規模のイベントで、日本のルミナリエやクリスマス街路樹と違って、街との一体感が素晴らしく、町中がプロジェクションマッピングされ、「街ごとメディア」や「街ごと現代美術館」の様相です。

ただゲストがやってきて、見て帰るイベントではなく、自らLEDを体に纏ったりする参加型のイベントで、言うならば「光のフェス」のような感じです。

面白いのは、街中の小さなカフェの店内でも、自らこのイベントに参加するために勝手にデコレーションしており、このような背景にはLEDが安価に普及したこともあるのでしょうが、市民のセンスが問われる点でもあります。

この市民のセンスとは、一体どこから生まれるのでしょうか? いうまでもなく、自由な表現や発言は、風通しが良い機能的かつ自由な社会システムから生まれるものですので、空港を見れば、その町で暮らす人たちのことがわかるのです。

シドニーは、まだまだ成長の余地があると感じています。

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高城 剛
たかしろ つよし

1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

 

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