海に目を向ければ、日本は資源大国だ 『オーシャン・メタル』を書いた谷口正次氏に聞く

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──海底資源の鉱床は生成によりいくつかの種類がありますね。

主なものを挙げれば三つだ。まず沖縄トラフのような海底熱水鉱床。水深700~1700メートルの所にあり、金、銀、銅、亜鉛、鉛などが含まれている。最近注目され出した「コバルトリッチクラスト」は、水深800~2500メートルの海山の斜面に海水中のレアメタル類が薄い層として広範囲に堆積したものをいう。また以前から知られている「マンガン団塊」は、品質的にはコバルトがやや多いコバルトリッチクラストとほぼ同じだが、特にレアアース類の品位が高い。水深4000~6000メートルの公海の深海底に主にある。

このうちコバルトリッチクラストとマンガン団塊は太平洋に広く豊かな資源として存在する。マンガン団塊はハワイとメキシコの間に多く、日本は2カ所に北海道と同じぐらいの面積の鉱区を持っている。これまでの含有レアアースの調査では、中国の最も品位の高いものに比べても劣らないという鉱物もあった。熱水鉱床の多くは、太平洋プレートがフィリピンプレートに潜り込む地帯に沿って分布していて、海底火山として噴き上がった小笠原諸島近海や沖縄トラフが特筆される。

──日本近海には話題のメタンハイドレートも結構分布しています。

世界的に見ても膨大な量になる。炭素換算で試算すると、6750億トンの石炭、1600億トンの原油、960億トンの天然ガスに対して、メタンハイドレートは3兆トンという。日本にはシェールガスが大してないとすれば、深海底とはいえ、メタンハイドレートでの米国との共同研究を大いに促進すべきだろう。

リン鉱石にも注目したい。植物生育の3要素の一つであり、陸上のリン鉱石はモロッコや中国に偏在しているが、海底にも結構ある。農業国のニュージーランドは14年には水深400メートルの海底で鉱石の採掘を手掛ける。特に日本の土壌はリン分が少ないので、リン資源はしっかり押さえておくべきだ。

──日本のEEZ(排他的経済水域)は世界6位の広さがあります。

448万平方キロメートルもある。陸地にEEZを含めると、中国が世界7位で日本は9位の面積だ。いかに日本は「領土」が広いか。それだけ尖閣諸島も沖ノ鳥島、南鳥島も大事なのだ。日本は、海に背を向けず、資源が豊富な国だという意識を持って海洋に果敢に進出していかなければならない。

(聞き手・本誌:塚田紀史 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済 2012年12月29日-1月5日 新春合併特大号)

『オーシャン・メタル』 東洋経済新報社 1890円 228ページ

  

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