バーへは、ひとりで行こう―女性編

女だって、ひとりバー。

酒は大人の教養である―その3. ウィスキー後編

最近は、日本でも、ひとつの蒸留所でつくられたシングルモルト・ウィスキーが、発売されるようになりました。

シングルモルトの魅力は、なんといっても、大麦麦芽と水、そして熟成に使われる樽という、たった3つの素材から、無限に広がる味わいのハーモニーが楽しめることだと思います。

そして、その技にたけているのは、やはり、ウィスキーが、ゲール語で「生命の水(Uisuge-beatha)」と呼ばれていた15世紀から、ウィスキーづくりを続けてきたスコットランドの人たち。

現在、ウィスキーづくりが行われているのは、アイルランド、スコットランド、カナダ、アメリカ、そして日本の5カ国ですが、やはり、シングルモルトとなると、その百花繚乱ぶりは、スコットランドが群をぬいています。

その理由は、11世紀、アイルランドからのスコット人の移住にともなって(私見ですが、このときにウィスキーづくりも一緒に伝わったのではないかという気がします)、スコットランドの名のもとになる<スコシア>という地名が与えられてからの歴史をさかのぼると見えてきます。

シングルモルト好きがよく口にする、アイラ、スペイサイドなどといった生産地へのこだわりは、初心者には、まったくもってちんぷんかんぷん。

それは、同じ大麦麦芽でつくる酒であっても、使う水(ウィスキーづくりには現地で採取できる水しか使いません)と、製造そして熟成させる環境によって、まったく異なる味わいになるから。

いちばん個性がくっきりしているのは、スコットランドの南西、アイラ島でつくられる「アイラ・モルト(以下、「ウィスキー」を省略)」

チャールズ皇太子がお好きだというラフロイグが、その代表。「薬みたい」と称される強烈なヨード香が、好きな人には魅力でもあり、苦手な人には嫌悪の対象でもあり、という、人間社会にもそんな人いますよね、みたいな、ウィスキーです。

それとは逆に、香りの強さや味のタイプに違いはあれど、誰からも嫌われない、誰もが安心して飲める優等生が揃っているのが、「ハイランド」。中でもスペイ川沿いには有名どころがきら星のごとく蒸留所をかまえているので、特別に「スペイサイド」と呼ばれています。

その他には、エディンバラがある南部のローランド、キャンベルタウン、そして銘酒タリスカーの産地、スカイ島を有するアイランズが、(スコットランドの)シングルモルト5大産地とされています。

興味がある方は、「シングルモルト 地図」で検索すると、詳しい情報が得られますが、その際は、ぜひ、地名の確認だけではなく、その土地の歴史にも触れてみてください。

たとえば、スコットランド最北の蒸留所とされるハイランドパーク、そして日本でもおなじみのスキャパを産するオークニー諸島は、分類上はアイランズに含まれており、地図を見ると、確かにスコットランド最北。

こんなところでウィスキーが?と思ってしまいますが、実は、ストーンヘンジよりもエジプトのピラミッドよりも古い、新石器時代の遺跡が最近発見され、高度な文明があったのでは、と、現在も発掘が続けられているということです(NHK Eテレ「地球ドラマチック『スコットランド“巨石神殿の謎”』」2012年2月12日より)。

また、アイラ島でつくられている「フィンラガン」というシングルモルト、その名前は、14世紀にスコットランドを制圧したアイラ島の君主が建てた城の名称に由来するといいます。

酒は多くの場合、それがつくられる土地の歴史や文化を背景にしているものです。なかでも、スコットランドのシングルモルト・ウィスキーを味わうときは、特に、産地やヴィンテージの蘊蓄だけでない、有史以来の、いまはなき民族の暮らしぶりや歴史に想いを馳せるという楽しみがあります。

イラスト:青野 達人

(※次回は1月11日(金)掲載。テーマは、「バーでのコミュニケーション」です。)

 

拙書『下北沢 バー・ホリーのお酒の本』、ウィスキーの項には、この連載のイラストも担当してくれている青野達人氏による、伝説のエピソードを盛り込んだ5大産地のイラスト地図があります。電子版は試し読みもできますので、見てみてくださいね。71ページです。

 

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