日経平均1万6000円割れでも強気になれない 「日本株は割安」説に惑わされないほうがいい

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もう一つ、筆者が注目しているのは、「米国のS&P500株と米国債の先物価格のレシオ」である。このレシオは、今年の1月に株価が急落した際に急低下した。現在は、米国株が想定以上に堅調なため、米国債価格が上昇(利回りは低下)している中でも、このレシオは高止まりしている。

しかし、株価と国債が双方ともいつまでも高値で推移し続けることはない。結果的にこのレシオは低下し始め、「株価急落・国債価格急騰」といった動きがいずれ起きるのではないかと考えられる。

すでに、先週末の株安・国債価格上昇にその兆候が見られ始めているのではないだろうか。直近のレシオは15.79だった。事態が急展開すると、投資家が現金化を急ぐ事態、つまり、国債までも手放さなければならないほどの緊急事態になり、株安・国債暴落が生じ、金利急騰という事態につながることも十分に想定される。

これが行き過ぎることで、いわゆる「クラッシュ」は収束するのだが、現状はそのような現象が起きるのを待っているようにも見える。そのトリガー(引き金)が果たして英国の国民投票になるのか、それはわからない。

いずれにしても、このレシオが直近安値の15.56(4月7日)を下回るようだと、市場環境の急変は不可避となる。今はそのまさに一歩手前の状況のように、筆者には見える。もし割り込んだ場合には、株価の大幅調整が起きる可能性が高いことを理解しておくとよいだろう。

もちろん、日銀の金融決定会合での「日銀のETF買い入れ額の大幅増額」など、「ビッグサプライズ」に期待する声も市場にはある。

今は「イベント通過」を静かに待つとき

しかし、それは、たとえ一時的には効果的なように見えても、世界の金融市場の不透明感を払しょくすることはない。またこうした「人為的な株価水準の引き上げ」は、高値づかみをした投資家の戻り売りの機会を提供するだけであり、株価の持続的な上昇につながるわけではない。そのことは、すでにこれまでの株価動向が示しているはずだ。

読者が少しでも運用やトレードに関心のある方なら、市場に関して、期待や希望を持つことは禁物である。冷静かつ冷徹に市場環境を見つめ、行くべき方向に行く相場についていくことが肝要だと筆者は考える。

繰り返すが、いまは無理にリスクを取る局面ではない。市場は逃げてはいかない。読者がトレーダーではなかったとしても、いまは「英国の国民投票というイベント」の通過を「静かに待つこと」も、立派な戦略のひとつであると、ぜひ覚えていただきたい。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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