「株主が稼ぎに満足する100社」ランキング ROEだけでは株主価値の増加は測れない
企業の収益力、株主価値への貢献度合いを測る代表的な指標が「ROE」(アールオーイー、自己資本利益率)だ。
ROEは、株主に帰属する利益である「純利益」を、株主が企業に預けているおカネである「自己資本」で割って求める。計算式が示すとおり、企業が株主のおカネからどれだけ効率的に利益を生み出すかを表している。
日本企業のROEは国際的に低水準として知られており、株式の売買シェアで6割を超える外国人投資家にとっては魅力的な水準にあるとは言えない。安倍政権が「第3の矢」の成長戦略の本丸として、企業の「稼ぐ力」の強化を目標に掲げているのはこのためだ。
その一環として2014年8月、経済産業省が取り組んだプロジェクトの最終報告書、通称「伊藤レポート」は、「8%を上回るROEを最低ライン」とした。だが、3月期決算企業の決算発表が出尽くした2015年度も日本企業のROEの平均は7.8%と依然低水準にとどまり、16%だった米国企業の半分にも届かなかった。
ROEよりも大事なのは「エクイティ・スプレッド」
では、たとえばROEが8%を上回る9%であれば、その企業は株主価値の向上に貢献したといえるのか?答えはそう単純ではない。重要なのはROE自体ではなく、ROEが株主の期待する利回り水準である「資本コスト」をどれだけ超えるかにあるからだ。そして、その資本コストは当然ながら個々の企業によって異なってくる。このことは、伊藤レポートにも「資本コストを上回る企業が価値創造企業であり、その水準は個々に異なる」と明確に記されている。
そこで、個々の企業のROEが株主の期待する利回り水準である「資本コスト」をどれだけ超えるかを測定し、ランキングを策定した。このROEから資本コストを引いて求めた指標を「エクイティ・スプレッド」と呼ぶが、機関投資家などの間でも「株主価値を測る究極の指標」として、注目が高まっている。(「エクイティ・スプレッド」の求め方については、最後に図表を用いて説明した)
ここでは、金融業種を除く東証1部上場企業で、5月末時点の時価総額が300億円以上の企業をエクイティ・スプレッドが高い順に100社ランキングした。ROEは、東洋経済新報社の来期業績予想データを用いて来期の予想ROEを基準とした(3月決算企業の場合は2018年3月期)。自己資本比率が小さい企業などには留意する必要があるが、これらが株主の期待を上回って稼ぐ「価値創造企業」の代表格といえる。
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