底を打った原油価格は自然と60ドルを目指す 今後ドル安基調が続けば下支え要因になる

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ジュネーブのOPEC本部。原油価格が回復傾向にあることから、総会でも現状維持の方向となりそうだ(写真:ロイター/アフロ)

原油価格が膠着状態にある。2日にはOPEC総会を迎えるが、事前に目立った報道はなく、主要産油国の間でも増産凍結などに向けた話し合いがもたれた形跡はない。4月の産油国会合において、サウジアラビアが増産凍結合意を目前で反古にしたことで、産油国の足並みが一気に崩れることになった。しかし、原油相場はそれを機にむしろ上昇基調を強めている。結局のところ、供給削減をしなくても、原油価格は反転したのである。

OPECはあえて行動する必要がなくなった

今回のOPEC総会では、明確な方向性が打ち出されることはないとみられている。30ドル割れの水準にあった原油価格がひとまず50ドルを回復しており、産油国も慌てて策を講じる必要はないと感じているはずだ。また、サウジとイラン以外の産油国には、余剰生産余力はそれほど多くないもようである。さらに、米国の産油量が減少傾向にある中、サウジやイランも、原油価格を押し下げるような増産をあえて行う必要はないだろう。

このように考えると、OPECはあえて行動する必要はなく、現状の産油量を維持するのが自然であり、最善の政策ということになる。世界の石油需要は今のところ安定的に増加している。世界的な景気の落ち込みがないかぎり、需給は早ければ年末までに、遅くとも来年の前半ごろにはバランスし、原油価格を支えることになるだろう。

今回の原油価格の反発基調において、米国内の産油量の減少が寄与していることは間違いない。米国のシェールオイル企業の破綻は100社を超えているもようであり、これが米国の産油量の減少につながっているものと考えられる。一部には、原油価格が反転すれば、すぐに生産活動が再開されるとの指摘も聞かれるが、少なくとも破綻企業が増加している事実を考慮すれば、そのような動きはそう簡単には起きないのではないか。今回の破綻企業の増加は、現状の原油価格の水準では、生産活動が継続できないことが明白になったといえる。

したがって、生産再開に必要な資金の出し手からすれば、今後の原油価格が相当の高い確度で、一定水準で推移することを確認する必要がある。その水準は45ドルではなく、最低でも50ドル、できれば60ドルは欲しいところ。そう考えると、米国内の産油量が再び増加に転じるには、かなり高いハードルがあるといえる。この点からも、需給が再び緩和するようなことは考えにくい。

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