底を打った原油価格は自然と60ドルを目指す 今後ドル安基調が続けば下支え要因になる

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5月のメモリアルデーを境に、米国ではドライブシーズン=ガソリン需要期に突入した。原油相場は、ガソリン需要の増加と在庫の減少を背景に、石油相場全体が上昇しやすい時期に入ったわけである。米国内の石油需要は今年に入ってから堅調に推移しており、これも在庫減少に寄与しよう。また、この時期までに原油相場が上昇基調にある場合、年末までその基調が続きやすい傾向がある。今年は年初に安値を付けたこともあり、その後の反発基調により、この上昇パターンに適合する値動きになっている。

原油相場を取り巻く環境はますます複雑化しているが、この傾向に乗るのであれば、原油相場は年末までのいずれかのタイミング、一度は60ドルの大台を試すことになるだろう。ただし、上昇には投機筋のロングポジションがある程度解消される必要がある。OPEC総会を機に投機筋がポジション調整の売りを出す可能性があり、その場合には47ドル台から45ドル台後半までの調整となる可能性もある。

ドルの基調転換が原油価格の反転・上昇に寄与

60ドルを目指す際には、ドル安基調の継続が不可欠であることは言うまでもない。原油価格が底打ちから反転・上昇する過程において、ドル高基調の反転が大きく寄与した。思い出せば、2014年7月に原油相場が下落に転じるきっかけとなったのもドル高だった。したがって、ドルの基調転換は今後も原油価格の下支え要因として不可欠な要素になる。

幸い、米国はこれまでのドル高政策を転換させ、ドル安を志向していると考えられる。ドル指数はおおむね7年ごとに上昇と下落を繰り返すサイクルがあり、その7年目が昨年であったことも、その見方を裏付ける根拠になっている。今後複数年にわたり、ドル安基調が続くとすれば、原油相場にはポジティブな要因となる。

いずれにしても、原油価格はすでに底を打った可能性が高く、大崩れすることはないだろう。米国が利上げの可能性を示唆することでドルが上昇すれば、これが原油価格の上値を一時的に抑える可能性はあるが、7月に利上げを実施するまでに、それを織り込む形でドルの上昇が頭打ちになれば、その後はドル安を支えに堅調に推移するだろう。その間に需給要因に大きな変化がなければ、原油相場は自然に60ドルを目指すことになる。

その場合、米国ではインフレ圧力が着実に強まるだろう。また景気への悪影響も念頭に入れる必要が出てこよう。これまで原油価格の上昇は、株式市場にとってポジティブ要因としてとらえられてきたが、今後はそうはいかなくなる。原油相場が上昇した場合のさまざまなリスクを念頭に入れたうえで、市場動向を見極める必要がありそうだ。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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