ITが人間に牙をむく ITのプロが警告する、日本企業の新たな病(下)
――どうバランスを取ったらいいでしょうか。
ダイエットに似ています。生活スタイルとか文化とか歴史、体質によってバラバラ。まず、大事なのは、自覚をするということです。経営論からいったら、戦略とか考える時間があったら、そもそもここで発生しているムダとか、体質の劣化という進行を止めないと。
今までのテクノロジーと一番違うのは、かなり急速にあっという間に広がり、まだ広がり続けていることです。自覚するヒマがなかったのかもしれない。でも、ついに個人レベルでもネット依存症などの問題が出てきました。私が言いたいのは、組織はネット依存症の個人以上に病んでいることです。ITのデメリットは、本社・管理部門が異常に強くなってしまったことです。
いつの間にか現場が儲からなくなった
――管理が強くなってもしょうがない。
しょうがないですよ。
――会社は現場が強くないと。
意味がない。価値創造と価値提供をする人のために、テクノロジーなりパワーが使われないといけないのに、その上にいて権力を持って、ITでパワーアップしてということになっている。やたら調査しろとか、報告しろとか。使いにくいシステムを本社主導でつくって。ITは不景気の中で、本社主導でコストカットするという流れにうまく乗った格好です。IT業界のマーケティングもうまく行きすぎた。
そして、いつの間にか、現場が儲からなくなりました。市場に対峙する価値を提供する人たち、価値を創造する人たちの発言力や能力が相対的に落ちて、コスト抑制によって業績を何とか保つ。
やたら、経営者が調べてこいとか言っているワケです。アホみたいに。大した決断もしていないくせに。管理したがるんですよ。非常に内向きで縮小均衡の中で、非常に消極的なムードとか、あるいは経営者の意図とか、そこで醸し出されるムードとかが、ITというツールとうまくリンクしてパワフルになりすぎちゃった。これは深い問題です。