ITが人間に牙をむく

ITのプロが警告する、日本企業の新たな病(下)

こんな時代には、やりながら考えるしかない。何が大事かといえば「ノリ」です。ノリがないと、すべての議論はやらない方向に行く。組織がIT中毒に冒されていたら、やらない議論ばかりになります。重篤な会社は、ロジカルにほとんどやらないほうに議論がいく。「やってみよう」とならない。「忙しい、忙しい」と現場に行かない。

ITほど安心、安全のタガが外れたモノはない

――やらないのは楽ですから。

そうです。易きに流れる。感度が高い経営者は、そこに異常な危機感を持っています。体質を変えなければならないのに、ITが「あらゆる面で」「あらゆるところで」「あらゆるときに」企業の体質なり思いなり意識を劣化させている。

やまもと・たかあき 1965年生まれ。広島県出身。88年広島修道大学卒業、アシスト入社。大型汎用コンピュータ向けソフトウエア販売担当。93年インテルジャパン入社。国内家庭用パソコンの戦略立案などを担当。96年ドリーム・アーツ設立、現在に至る。

工業製品と呼ばれるものの中で、ITほど安心、安全のタガが外れているモノはないですよ。食品とか自動車などの工業製品は、厳格な法規制があるのに、ITにはそれが不足しすぎている。パチンコよりも賭博性が高いことが野放図にされたり。明らかに依存症という疾病が巻き起こされることが分かっているのに利用制限もなかったり。これは無法地帯。ワールドワイドに広がったネットワークは国の法律を超えている。社会においても曲がり角にきていると思います。日本はとくに深刻です。

私はIT業界にいますが、もういくら私たちでも野放図にもっともっとITを使ったほうがいいというアホなメッセージはもう無理。無理だしやっちゃいけない。人間が生み出したすべてのテクノロジーは油断と慢心によって、人間に牙をむいてきます。古代をたどれば、人間は火を起こせるようになって生活を便利にしましたが、同時に火災が起こるようになりました。産業革命は公害を、自動車の普及は交通事故を生み出しました。

ITもいよいよ牙をむいているワケです。もちろんITがなければ、とくに大企業はやっていけません。不可欠な存在です。しかし、副作用もあるのです。これまでは、とにかく新しいモノを採り入れて、もっと使うということがメリットだと言ってきましたが、そうではなくなってくる。

ITは食べ物に似ています。食べ物でも「体にいいもの」だと過剰摂取したり、バランスを欠いた摂取をしたりすると、いろんな疾患になり、やがては大病になる。脚気、痛風などがそうです。健康体でなくなってくる。

だけど自覚がない。新しい食べ物が出るとすぐに腹一杯食べる。でもカロリーが高すぎて病気になっている。そういう状況です。ITは人間にとっての食べ物と同じで、ないと困るが付き合い方が大事です。賢く、時には注意して使わなければならなくなっている。

次ページITで力を増した部署は?
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 就職四季報プラスワン
  • 非学歴エリートの熱血キャリア相談
  • 御社のオタクを紹介してください
  • スージー鈴木の「月間エンタメ大賞」
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
「氷河期」を救え!<br>どこまで進む?就労支援

バブル崩壊後の不況期に学校を卒業し、就職難に苦しんできた「氷河期」世代。彼らをめぐる状況が変わり始めています。政府は650億円を投じ就労支援を開始、中小企業の正社員採用も広がってきました。この好機を生かす秘訣を探ります。