ITが人間に牙をむく ITのプロが警告する、日本企業の新たな病(下)
――官僚主義になりやすいワケですね。
今まで日本において官僚主義にむしばまれているのは、「親方日の丸」の会社だけだったんです。だけどITによって中堅規模の会社まで、ものすごい官僚化しちゃったんです。本社が強くなったから。大問題ですよ。本社が強くなってどうなったかというと、現場は萎縮した。価値創造と価値提供をする本業の人たちの萎縮が始まった。保守的に発想し始めた。
保守的な行動パターンとメールとかITがマッチしたんですよね。「念のためのCC」とか。めちゃめちゃリンクしている。こんな話を聞いたら経営者はシュンとしてしまうでしょう。
大企業は経営者が決断をしなければならない。経営者がこの病巣に対する認識がないと何もできません。先日も、ある場所で講演したときに、某大手企業の部長さんに「どうやったら経営者は認識を変えるか」と聞かれたが、「そんなの変えられるワケはない。そんなことを挑戦したらダメだと。家族のために余計なことを言わないほうがいい」と回答しました。そんなドン・キホーテになるなら独立したほうがいい。ハイリスク・ゼロリターン。そんなバカなことはない。経営者が自覚するしかない。
机の前に何もなければ見えないものが見えてくる
――自覚している経営者はいますか。
います。各自の執務机のパソコンを取り払って、オフィスの人員よりも少ないパソコンの台数しか置かなくなった会社も出てきました。順番でしか使えないようにしている。そうするとダラダラと余計なメールも打てない。机の前に何もないので対話したり、電話したりする。そこで見えないものが見えてくる。
――1人1台がよくない?
よくない。みんな何となく思っている。そして組織論で考えないといけない。大手企業の情報システムのトップで、このことに気づいている人もいるが、感情的に反発する人もいる。自分たちがやっていることを否定されたように思うからです。ただ、それはどちらかというと会社のプラスになることではなくて、ITベンダーの片棒を担ぐほうに軸足がいっている。病巣はかなり深いですよ。