チマチマした原価改善で顧客は喜ばない 野路國夫・コマツ社長に聞く

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――中国の需要が低迷する中で、これまで値上げを続けています。どうして需要が落ちているのに値上げができるのですか。

需要に対して供給が過剰だから売価が落ちる、というほど単純ではありません。コマツは、この7年間で2割くらい日本での売価を上げました。冒頭の論理がもし正しいなら、日本では震災前まで需要が増えていなかったのだから、値上げできたわけがありません。

マーケットにはいろんなお客さんがいます。安く買いたいお客さんは安くしか買わない。けれども、高くても絶対浮気せずにコマツ機を買ってくれるお客さんはたくさんいる。その代わり、お客さんには手厚いサービスをしています。故障したらすぐ飛んでいったり、コムトラックスで稼働状況を見て、「こうしたらもっと燃費を節約できますよ」と指導したり。

リストラで利益が出てもブランドに傷が付くだけ

――現状では国内外で減産を行っていますが、協力企業への影響は。

今の国内工場の稼働率は7割、中国は3割。空いた時間には、教育を受けさせたり、生産改善活動をしてもらったりしています。日本から中国に進出した協力企業は復興需要がある日本で稼げるからいいですが、中国の協力企業は大変です。彼らには、「コマツ以外の仕事を取りなさい」など、いろんな指導をしています。今までは仕事が多くて、コマツだけで手一杯だったでしょうが、競争力があれば仕事は取れます。

このように仕事がない状況でも、コマツの売上高営業利益率は十数%も出ています。一方、残業がない現場の社員や協力企業は苦しんでいる。伸びてきて落ちるというのは、経営的に本当に難しい。

キャタピラーは同社史上最高の利益を出しながら、あちこちでリストラをしています。それでも、誰からも非難されません。コマツがもしリストラをしたら大騒ぎになるでしょう。コマツは、日本的なよさを大事にしたいから、雇用は守る。リストラ効果よりも、せっかく育てた社員を失ったり、ブランドに傷が付いたりする損害のほうがよほど大きいと思います。

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