チマチマした原価改善で顧客は喜ばない 野路國夫・コマツ社長に聞く
――建機におけるイノベーションとは?
今までは、競合メーカーの製品に比べて安いとか、馬力があるとか、操作性や燃費がいいとかで販売競争をしていました。もうそんな時代ではありません。お客さんの生産性を上げ、新しい価値を創造するようなことをやらないといけない。原価改善なんかをチマチマやっていても、お客さんは喜びません。
米国で来年1月に発売するICTブルドーザーはイノベーションの一つです。情報通信技術を活用して、ほぼ自動で整地と掘削ができます。販売価格は高いですが、30~40日かかる大型の道路工事を2回受注すれば、すぐ価格上昇分を取り返せます。
これからは、売価など従来の性能で競争するのではなく、新しい競争軸を設ける時代になると思います。たとえば、コマツが業界で初めて販売した無人ダンプトラックには、あちこちのお客さんから「ウチもウチも」と引き合いが来ています。従来の競争軸から、「無人ダンプを持っているか、持っていないか」に競争軸が変わったのです。
中国にネガティブな要素は見当たらない
――昨年春から建機の最大市場である中国が低迷しています。
コマツの販売台数は、今年3月から前月割れが続いていましたが、ようやく9月で落ち込みが止まりました。前年同月比でも、最悪だった今年7月のマイナス65%に対し、まだデータを見ていませんが、12月はマイナス幅が40%以下に縮んだようです。
実は、中国では現在あまりネガティブな要素が見当たらないのです。30トン級の油圧ショベルが若干売れるようになりました。コムトラックス(注:コマツの稼働管理システム)で見た中国の建機稼働時間は、20トン以下の油圧ショベルで対前年のマイナス幅が1ケタになりました。香港の中古車業者も、中国大陸に持っていく建機を買い出しました。
今はほとんどの人が中国を悲観的に見ています。でも、私の勘では、来年の春節(注:中国の旧正月。2013年は2月)が明けたら、回復が期待できると思います。
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