グリー元取締役が「6.6億円調達」で狙うこと 超軽量経営で絶妙な事業モデルを立ち上げ
「分散メディア」とは自らの本拠となるウェブサイトを持たず、SNSを通じて拡散されることを主目的にしているメディアのこと。代表的なのが、米国のBuzzFeedだ。
コンテンツをユーザーに届けるために使用するインフラは、ユーチューブ、フェイスブックなど誰でも無料でチャンネルを開設できる既存プラットフォーム。ここに自社制作した動画をアップロードし、それをユーザーに再生してもらいシェア(拡散)してもらうだけでいい。サイトのデザイン費用、運営費用などが一切かからないのだ。
収入を得る手段としてはスポンサーの商品を紹介するような広告動画を制作し、再生回数などに応じて広告主に課金すればいい。プラットフォーム企業を利用すると、なにかと3割程度の手数料を抜かれてしまうという印象があるかもしれないが、この事業モデルの場合は手数料を取られることもない。広告主が払ってくれた広告費はまるまるエブリーの手取りになる。実にうまくできた事業モデルなのだ。
初期コストほぼゼロでスタートできる
エブリーは、まずオフィス内で制作した短編動画を毎日のようにアップしていく。そして将来ストックが溜まったあとに、ウェブサイト、アプリなどの本拠地をつくる計画だ。「近い将来、スマホアプリを作る。クックパッドのように検索をしたりランキングを表示したりと機能面の付加価値を月額課金で提供していきたい」(吉田社長)。まずは完全分散メディアとしてスタートし、将来は自社ドメインを持つ、というロードマップなのである。
これまでは、新規のメディアを立ち上げる場合、自社ドメインを先に作るのが常道だった。この場合、「恥ずかしくないだけの分量のコンテンツをストックとして溜めてからスタート」となるので、立ち上げに時間とコストが掛かってしまう。しかも、一回立ち上げると、「初期コストをムダにしたくない」との思いから、うまくいかない場合にも、なかなかやめられなくなってしまう。
それに対し、待ち時間ゼロ、初期コストほぼゼロで今すぐに始められるのが、完全分散メディアのキモだ。「うまく立ち上がったメディアについては、アプリなどをつくっていくが、うまくいかなければ止めればいい」(吉田社長)。今後、新しいメディアを立ち上げようとしている新聞社やテレビ局などのオールドメディアにとっても大いに参考になるだろう。
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