「歯周病」と「認知症」の切っても切れない関係

歯ぐきの炎症や失った歯の放置は禁物だ

歯周病の症状である「炎症」は、簡単にいえば外から入ってきたり、身体の内部で生まれたりした害のあるものへの防御反応です。身体は自分自身、つまり細胞を破壊してでも悪いものを取り除こうとします。そうして生命の危機から逃れようとするわけです。いわば「肉を切らせて骨を断つ」という戦術です。

ただ、その「炎症」のプロセスの中で細胞の分子にさまざまな作用をする「生理活性物質」というものが生まれます。それはタンパクの一種であったり、活性酸素であったりしますが、それらは炎症のある場所だけでなく全身的に病的な老化や認知症の原因になることがわかってきました。

老化のひとつの症状としての認知症も、その正体は「脳の炎症」だと言われています。そして、老化・認知症と関係が深いのは急性の激しい炎症ではなく、むしろ「慢性の長く続く小さな炎症」だということも明らかになってきているのです。

では「慢性の長く続く小さな炎症」とはどんなものなのでしょう? いくつか例をあげると、たとえば糖尿病からの高血糖は血管の壁に炎症をおこしますし、腸などに問題があると慢性的に炎症を生じていることもあります。

日本と米国では「歯周病」のとらえ方が違う

その「小さな炎症」のなかで影響が大きいものが、意外なことに「歯周病」なのです。そもそも歯周病とは何でしょうか。耳にしたことがあっても、正しく知っている人は少ないかもしれません。日本歯科衛生士会ホームページより概要を抜粋しますと、「歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨で構成される歯周組織が、口の中の細菌感染によって破壊される慢性炎症性疾患のこと」で、成人だけではなく小・中学生などの若年層も多く罹患しているとされています。

適切に歯磨きができていないと、健康な歯ぐき(歯肉)に炎症が起こり、それを改善しないまま深部の歯周組織まで炎症が波及すると、歯と歯肉の境目の溝が深くなり、歯周ポケットが形成されます。これが重症化してしまうと歯がぐらつき始め、残念ながらたくさんの歯を失ってしまうことになりかねません。しかも歯をしっかり磨いていても、気づかずに歯周病になっている人がかなり多いのです。

2015年末に私が参加した米国アンチエイジング医学会(世界で最初に設立されたアンチエイジングの専門学会。世界110カ国、2万6千人の会員を擁する)総会では多くの発表者がこのことを指摘していました。

日本と米国では、歯周病に対するとらえ方が違うということを痛感しています。特に米国では、循環器系の疾患が日本以上に多いのが現状ですが、循環器疾患と歯周病が深くかかわっているというのは常識となっています。そのため、医師たちは歯周病を非常に重視しています。残念ながらこの認識は日本ではまだまだ十分ではありません。

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