「歯周病」と「認知症」の切っても切れない関係 歯ぐきの炎症や失った歯の放置は禁物だ
日本の60人(43~89歳)のアルツハイマー型認知症(AD)患者と、性別・年齢構成が近い120人の健常者を比較した研究では、自分の歯を半分以上無くしていたり、総入れ歯を使ったりしているとADを発病しやすいことがわかっています。
また米国の尼僧144人(75~98歳)を12年間追跡した研究でも、歯数が少ないほどADのリスクが上がることが示されています。 歯の数でいうと9本以下の人は10本以上の人と比較して平均2.2倍ADになりやすかったということです。
別の65歳以上の日本人4425人を4年間追跡した研究では、20本以上自分の歯がある人と比べて、歯がほとんどなく義歯未使用の方は認知症発症の危険が平均1.85倍高まる結果でした。対照的に、失った歯の場所に義歯などをキチンと入れている場合はリスクに大きな差は認められませんでした。
歯科での定期検診の大切さ
かかりつけの歯科医院のない人は定期検診を受けている人と比べて平均1.44倍認知症になりやすい傾向がありました。また米国の80歳を中心とした高齢者を18年間追跡した大規模研究では、男性では過去1年に2回以上歯科受診をしていると平均1.89倍認知症になりにくかったとのことです。
私の医院に通っている最高齢の患者は、92歳の女性H.Kさん。定期的に義歯のチェックに通院されているのですが、今も現役バリバリ! 園芸農家をされていて、職場の同僚はお孫さんです。「私が仕事をしないと……」と、毎日お花をまとめたり、出荷したりととてもお元気です。やりがい、そして仕事や地域を通してのほかの人たちとのかかわりが健康寿命に関与していることは否定できないでしょう。もちろん、義歯の定期的な管理もきちんとできていて、しっかりかめていることは言うまでもありません。
別の患者では84歳の女性S.Sさんも元気です。自身の歯は19本もあり、しかも定期チェックで常にピッタリと合った義歯を使用されています。歯のお手入れも、セルフケアと当院でのクリーニングでバッチリです。しかも大好物はお肉。「老人会の行事が忙しくて、イヤになっちゃう」と口ではおっしゃいますが、いつも楽しそうです。
「かめない」ということは、それだけで脳への刺激が減り認知症になりやすい可能性もありますし、食事内容が制限されることで栄養不足になり、それも認知機能の低下に拍車をかけるのです。
歯磨きを怠ることが認知症の遠因になる、と言っても過言ではありません。そして歯の状態を良好に保つには歯磨きだけでなく、歯科への定期的な受診が欠かせません。歯と口の状態を良く保つことは認知症予防・アンチエイジングに直結しています。定期チェックを受けて自分の歯の状態を良くするコツをつかみ、不本意ながら歯を失ったときには放置せず、よく合った義歯を入れるなどして補っておくことが必要になるのです。
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