安倍政権誕生で不動産市場はどうなる? 大半の物件は下落圧力が高まるだけ
「財政政策」や「金融政策」は、あくまで経済再生の補助的な役割に過ぎません。
そもそも日本経済は高度成長を終え「失われた20年」を過ごし、給与所得者の給与が低下しデフレが続いてきましたが、その原因は「社会の硬直化」にあるからです。「少子化・高齢化」「経済成長率低下」の下で、「既得権益体制」や「産業構造」「雇用構造」「社会保障体制」に変化をもたらすことなしに、経済の「潜在成長率」は高まりません。
見方によっては、自民党政権の財政政策や金融政策は、単に将来に負担を先延ばしにしているだけ、長期的にはマイナスとも言えます。こうした事態が国債価格の下落を招くおそれがあるのだと、従来から懸念されてきたはずです。各種の構造改革を行うことと同時に、その補助的な政策としての財政政策・金融政策がとられない以上、大半の不動産には下落圧力が高まるだけです。
日本の住宅は800万戸近くが余剰
ただでさえすでに日本の住宅は800万戸近く余剰し、人口・世帯数は縮小が決定的です。そこに加えて資源高・物価高が起きれば給与所得者の可処分所得はさらに低下、したがって住宅取得能力は低下します。アパート経営などの収益物件についても、家賃支払い能力の低下や修繕費などのコスト増などで、経営環境は悪化します。
さらに問題は「金利が上昇した場合」です。
「物価目標」が達成される場合、それが経済の好転を伴うケースで、かつ給与所得者の給与が上昇するトレンドに入る場合は別として、そうならない場合、つまり「実体経済の好転や給与所得者の給与上昇を伴わない」といった状態で、金利が上昇したらどうなるでしょうか。
まず住宅市況は大幅な悪化が避けられません。従来からの低金利に金融機関の競争にさらに拍車がかかった状況で、10年固定金利であっても1パーセントを切る商品も出ています。
住宅取得への固定資産税・不動産取得税優遇、住宅ローン控除なども十分に効いており、住宅市場はいわゆる「高原状態」にあります。ここで金利上昇が起きれば、それだけ住宅購入者の住宅取得能力は低下し、住宅価格が下落するのは自明です。