日系企業はウンザリ?高学歴LGBTの就活 知られざる優秀人材の海外流出

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プロフェッショナルな仕事をもつLGBT社会人たちを中心に、2010年に立ち上げられたNPO法人がある。その名もグッド・エイジング・エールズ(以下、グッド)だ。LGBTの老後まで考えて、LGBTが暮らしやすくするための活動を積極的に行っている。

そのグッドが、3年前からLGBT学生向けのセミナーを毎年開催している。「50人ほどが参加できるセミナーは毎回満員になる」という。「就活自体、学生は不安。その上で性に対して何かしらの不安を感じるのがLGBT。まだLGBはカミングアウトしなければそのままマジョリティの異性愛者と同じようにみられるが、特にトランスジェンダーの学生は大変だ」と、LGBT就活セミナーを主催しているグッドの溝口氏は言う。

セミナーではLGBTの社会人が先輩として話し、学生はそれを聞く。今でも、日系の銀行など、金融系の“かたい”仕事では、LGBTは確実に不利となる厳しい現実がある。仕事のパフォーマンス以前に「家制度」といった古い慣習が残り、いまだに結婚しないと出世できない会社も多い。LGBT学生の選択肢は狭まるばかりだ。

優秀なLGBT人材が日本から流出

「LGBTも普通の学生。いわゆる就職人気ランキングに出てくるような大手有名企業に興味があり、採用試験を受ける場合も多い」(溝口氏)。だが、大手企業だからといってLGBTを受け止めるような社会とは限らない。その現実が思った以上に重いのだ。

たとえば、職場では「彼女(彼氏)はいる?」、「結婚は考えている?子どもは?」と異性愛者であることを前提にした質問が多く、「ちょっとあっち系なの?きもい~」と言ったこころない冗談に傷ついたり、悩んだりする。また、LGBTとしての権利を主張できない環境に慣れてしまい、カミングアウトしない方が楽と感じる人も多い。「カミングアウトが『できない』のと、『しない』は違う」と、溝口氏は強調する。後者にはカミングアウトへの自由な選択肢があるが、今の日本社会には残念ながら「できない」ケースが主だ。

最近は日系企業にも、変化の兆しがわずかに見えてきた。野村證券やソニーなど、ダイバーシティーの一環として取り組みをはじめている企業もある。だが、具体的な政策がでていないのが現状だ。

日系企業を蹴る学生

都内の有名大学を来年4月に卒業するトランスジェンダーの学生は、日系の大手銀行からいくつも内定をもらった。だが、結局選んだのは外資だった。「日系は、前例がないから正直どうしていいか分からない」と言われたという。「古典的な大手銀行にトランスジェンダーとして1人で立ち向かうことも一瞬考えたが、一生それは無理。仕事で私を評価してくれる会社に行きたい」と本音を吐露する。

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