日系企業はウンザリ?高学歴LGBTの就活 知られざる優秀人材の海外流出

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グッドのLGBT就活セミナーでも、就職活動を経験した学生のアンケートに「意外とLGBTに対して寛容だった」と答えたケースもあるが、後悔していることにも「セクシュアリティをもっと意識すればよかった」と答えている。また、辛かったことにもLGBTならでは回答がある。

例えば、トランスジェンダーの学生が入社すると性別に合わせた制服があると知って、自分はこの会社に求められていないと感じるなどの「セクシュアリティでNG」、「(女性なのに)何でパンツスーツなの?といちいち言われる」こと(これは異性愛者の女性でも言われてイヤな思いをした人がいるだろう)が挙がっているのだ。それほどまでに日本企業の理解は低い。

LGBTをサポートする企業を求めている

誰もが知っているある大手商社に勤めて6年目になるゲイ社員はこう打ち明ける。「自分で言うのもなんだが、語学堪能だし、仕事はいくつもプロジェクトを任されているし、会社に高く評価されているという自負はある。仕事での給料など待遇にも不満はない。無意味だが女性にもモテてる。だけど、ゲイの話をブラックジョークとして話す職場環境には限界を感じている。あと2年の間には辞めて、アメリカに行く予定」だと言う。

「大手有名企業だからといってLGBTに合う職場かどうかは分からない。私も自分らしい職場に出会うまで転職してきた」と溝口氏は明かす。

同セミナーでも、興味深いデータが出ている。

たとえば、ITや大手食品メーカーなど全くバラバラの業界に就職した6人の社会人の中で、就活時には、自分のセクシュアリティが全く関係しないと答えた3人の内、2人が実際に働き始めてから最もギャップを感じている。また、就職してからの方が3人とも差はあれど、セクシュアリティを意識するようになったという。一方で、就活前に自分のセクシュアリティがかなり関係すると答えいた1人は、就職後にはあまり関係しないと答えている。

性が仕事に影響を及ぼす可能性は高い。電通総研調べによると、LGBTを支援する企業であれば、「待遇や職種に関わらず働いてみたい」という人が20%もいる。また、カミングアウトするとすっきりして「15%も生産能力があがるというデータもある。会社としてはカミングアウトのメリットをつけたい」と、LGBT問題に積極的に取り組むIBMの担当者は言う。企業にとってもLGBT対策を行うことは大きな伸びしろとなる可能性を秘めているのだ。

雇われる側の事前準備も大事。だが、もしかしたら、企業側もダイバーシティーへの取り組みをおろそかにしていることで、優秀な人材を取りこぼしているのかもしれない。

企業の採用担当者の方々、もう一度、ダイバーシティーについて考え直してみませんか?

張 子渓 ジャーナリスト
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