未婚男性を追い込む「3%説」に隠されたウソ まことしやかな数字に踊らされていない?
3%説の間違いとは別に、前節で示した「35~39歳の未婚者が結婚できる確率」が何を意味しているのかについては、いくつか気をつけなければいけない点があります。これについても解説しておきましょう。
(1)「一生の間に結婚できる確率」ではない
まず、この数値が表しているのは「35~39歳の未婚者が5年後(40~44歳になった時)までに結婚できた確率」です。つまり、この人たちが45歳以上になった時にどれくらいの人が結婚できるのかという情報は計算に含まれていません。そのため、この数値は「35歳以上の人が今後一生の間に結婚できる確率」とは異なります。
(2)あくまでも2005年から2010年の間での数値
次に、この数値は「2005年時点で35~39歳の未婚者が5年後にどうなったか」という、過去のある時点での実態を示したものです(その意味では、「結婚できる確率」ではなく「結婚できた確率」と過去形で表現する方が適切です)。この数値があらゆる時代に適用できるものではないことに注意してください。たとえば、2016年時点で35~39歳の人が5年後に結婚できる確率がこれと同じである保証はどこにもありません。
「結婚したくないので、しない人」だって存在する
(3)そもそも全員が「結婚したい」わけではない
ここまでは特に詳しい説明をせずに「結婚できる確率」という言い方を使ってきました。しかし、この「結婚できる」という概念自体にも、少々注意が必要です。
結婚は基本的に、個人の自発的な意思でするものです。したがって、既婚者とは「結婚したくて、実際にできた人」のことです。一方で未婚者の中には「結婚したいのに、まだできていない人」と「結婚したくないので、しない人」の2種類が混在しています。
「5年後までに結婚できる確率」を厳密に計算するなら、未婚者のうち「結婚したい」と思っている人のみに注目し、その中で5年後までに結婚できた人がどれくらいいるかを調べたほうがよさそうです。しかし、国勢調査では未婚者に対して「結婚したいかどうか」を質問していません。このため国勢調査の「未婚者」には、「結婚したいけど、まだできていない人」と「結婚したくないので、していない人」の両方が区別できない状態にあります。
「結婚できる確率」というと、私たちは「結婚したい未婚者のうち、どのくらいが実際に結婚できるか」を想定しがちです。しかし国勢調査の「未婚者」「未婚率」には、「結婚したくないので、していない人」も含まれます。この点で、今回得られた数値は、直感的な意味での「結婚できる確率」とは微妙に異なるものになっています。
ちょっとややこしかったでしょうか? しかし、統計数値の意味を正しく理解するためには、こうした細かい点にもきちんと気を配る必要があるのです。
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