世界1000万人が学ぶ”あの”ビデオ講義 カーン・アカデミーを知っていますか

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一人ひとりの理解度に寄り添える

もう1つは、インターネットの強みをテコにしたカーン・アカデミーのビデオ講義は、学校教育の再考を迫るものでもあるからだ。

実は、カーン・アカデミーのビデオ講義を正式の授業として採用している学校がすでにいくつかある。カーン・アカデミーのあるシリコンバレーの学校区だけでなく、コネチカット州、ニューヨーク州などの小学校や中学校でも採用されている。

そうした学校での利用の仕方はこうだ。生徒たちは予習としてカーン・アカデミーのビデオ講義を家で見る。先述したように、授業を系統立てて見られるようにコースが作られており、生徒は自分の理解のスピードに合わせてビデオを見進めていくのだ。

そして学校の授業では、先生と生徒がもっとインタラクティブにやり取りすることに時間を使う。学習した内容について議論をしてもいいし、そこから進んで調べものをして発表をしてもいい。

要は、これまでならば、生徒は一斉に教壇に立つ先生のほうを向き、みんな一緒に学習をするというのが授業だったわけだが、そうした「一斉」でやってきたことは個々にビデオを見て済ませ、授業では、もっと深く掘り下げた内容について先生とやりとりするというようになったのだ。

自宅で見る授業については先生が生徒の進捗をモニターでき、また練習問題もあるので、生徒がどこでつまずいているのかなどもわかるようになっている。

何よりも、これまでならば後れをとった生徒は十分に内容が理解できないまま、クラス全体は次へ次へと進んでいたわけだが、生徒は自分でちゃんと理解できるまで同じビデオ講義を繰り返し見ることもできる。つまり一人ひとりに合った学習方法が可能になっているわけだ。

インターネット教育は今、大きな注目を集めている分野である。教育を進歩させたいと願う人々が、ここでさまざまな試みを行っている。その中心にいるのが、サルマン・カーン。教育の破壊的イノベーションを担う人物である。

 

 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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