中国人が「次は北海道に行きたい」と言う理由 爆買い後の「ココロ」をつかむ発信力の高め方
しかし、このようなドラマは韓国に比べると日本は少ない。中国ではアニメのファンが多いものの、「アニメ・漫画=子供」の印象がまだ強く、成人になるとテレビ・映画に向かうようになる。したがって、消費の主力とする中国人の若者に向け、彼らの意識・憧れに近い内容のコンテンツを提供していくことが重要だ。そこでのプロダクト・プレイスメントは、長期的にインバウンド消費、ないし日本商品消費に大きな影響を与えるだろう。
「網紅」の情報発信による広告効果は約1兆円
2015年中国の流行語TOP10に入った「網紅」をご存じだろうか。若者世代に巨大な影響を与えている「網紅(ワンホン)」は、「網=インターネット」にいる「紅=紅人=人気がある人」を示す。「インターネット・アイドル」の意味である。一般的な有名人などと違い、彼らは自分の個性や特徴をネットで生かしSNS社会で有名になった「素人」たちである。
中国には多数のマスコミはあるが、その論調は暮らしから遠いと言われ、若者にとって物足りない。したがって、彼らは、自分の視点に近く、自分のことをよく理解し、自分の特性にあう「仲間」の言論リーダー、あるいは憧れのライフスタイル提唱者を望む。そのため、フォロワーと同じ「素人」だった網紅たちは、草の根から大きな支援と信頼を得ている。
網紅は得意のジャンル(美容、ジョーク、エンターテイメントニュース……)で有名になり、SNSで数千万人のファンを持つ者もいる。どのジャンルにせよ、まずフォロワ―が多いので、網紅が発信した情報(動画が多い)を見る人も多く、拡散力が高く、流行を作りだす。たとえば、ファッションジャンルの数人の網紅が同じハイヒールを履くと、フォロワーはこれらが今のはやりだと判断し、欲しくなる。また、隣のお姉さんみたいな網紅が投稿した動画が親近感があると共感を得たら、あっという間に万単位の転送・コメントが殺到する。
網紅の情報発信による広告パワーは「網紅経済」と言われるようになった。その規模は、2016年に580億元(約1兆円)に達する見通しだ(新浪財経済、5月25日付)。現在、有名になった網紅は、網紅を管理する会社に属したり、自ら会社を起こすなど、組織的に動いている。網紅のネットキャラに合う商品を選定し、プロのライターに商品の紹介を書いてもらい、商品紹介、販売サイトへのリンクなどをテキスト・動画でSNSに掲載し、ファンからの質問にも対応する。網紅からの情報を友人に転送するとクーポンをもらえるキャンペーンなども実施している。商品の仕入れから配達まで管理する網紅もいる。
収入として、売上高の10~20%、つまり利益の30~40%が手に入る(人民網日本語版、4月5日付)。網紅業界で非常に有名な「Papi醤」(29歳の女性)の例だが、1つの広告枠がオークションで2200万元(約3億8000万円)で落札されたという話もある(Forbes JAPAN、5月8日付)。
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