「東大の日本史」問題はありえないほど面白い 「なぜ」を多角的な視点から問う

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「東大の日本史」の入試問題は、一生使える教養の教科書だ(撮影:尾形文繁)
学生時代の歴史の試験問題というと、空欄の穴埋め形式で人名や年号を問う問題や、選択肢文の○×を問う問題を、試験前に一夜漬けで丸暗記した苦い記憶とともに思い出す読者も多いだろう。
「こんなことを覚えて何に役立つの?」という疑問が浮かぶこともあったはず。しかし、ずばりその“意味”を教えてくれるのが、“東大の日本史”の入試問題だ。「東大の日本史」は、いわば一生使える教養の教科書。名門予備校講師として多くの東大合格者を輩出し、『10時間で歴史に強くなる 東大の日本史ワークブック』(かんき出版)などを著書に持つ相澤理氏が、受験生だけのものにしておくのはもったいない「東大の日本史」の魅力を解説してくれた。

歴史が身近に感じられるような問題

重箱の隅をつつくような知識を問う――それが、私たちが歴史の試験問題に対して持っているイメージだろう。しかし、それを覆すのが東京大学の日本史の入試問題(以下「東大の日本史」)だ。問題そのものが、「なぜ歴史を学ぶのか」といった問いの解になっているような、実に独特なものなのである。

論より証拠、実際の問題をご覧いただこう。

【問題】
1882〜1883(明治15〜16)年、伊藤博文らは、ドイツをはじめヨーロッパ諸国において、憲法や立憲的諸制度の調査にあたった。その際、彼等はしばしばドイツの政治家や学者などから、明治維新以来日本政府が進めてきた改革は余りに急進的であり、日本がいま立憲制度を取り入れようとするのは、必ずしも賢明なこととはいえない、とする忠告を受けたといわれる。
そこで、諸君が伊藤博文らの調査団に加わっていたと仮定し、上述のようなドイツ側の忠告に対して、日本として立憲政治を取り入れる必要があることを説明する文章を8行(記者注:240字)以内で記せ。(1989年度・第4問)
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