掃除機のダイソン、なぜドライヤーを開発?

「スーパーソニック」にかける熱い思い

「髪の毛の乾かし方や角度は、掃除機のかけ方よりもずっと多様だ。イギリス人女性はボリュームを出したがるけれど、日本人女性はストレートにしたがる。髪の毛にダメージを与えたくないのはみんな同じ。それだけを何度も試すロボットも作らなくてはいけなかった」。

低価格品があふれる市場に殴り込み

ダイソン社によると、スーパーソニックの中核的テクノロジーは、13枚のインペラーブレードを持つ高速モーターだ。従来型のドライヤーでは、モーターはヘッド部分に搭載されてきた。だが、ダイソンのモーターは表面積がコインほどの大きさしかないから、ハンドル部分に搭載できる。これが小ぶりですっきりした外観を可能にするとともに、従来型ドライヤーの「ダンベル効果」、つまりヘッド部分が重くて腕がひどく疲れてしまう問題も防げる。

さらにこのモーターは、運転音の周波数を低減するように設計されているという。また、送風部に付けるアタッチメント(ディフューザーやコンセントレーター)は、マグネット式で装着できるうえに、熱くならないようにできているため、着脱の際にやけどをしそうになったり、そこに触れた髪が焦げ臭くなることもない。

「怖いくらいだ」と、ダイソンは言う。「スーパーソニックのために、実に多くのことを学ばなければならなかった。どれも初めてのことばかりだった。発表会のために私が髪を伸ばすことも含めてね」と、ダイソンはフサフサの銀髪を揺らして笑った。「こんなに髪を伸ばしたのは、60年代の学生時代以来だ。当時の私は、フラワー柄のシャツを着て、フレアジーンズを履いていた」。

スーパーソニックの開発は安上がりではなかった。最先端の毛髪研究所を新設するなど、投資額は3800万ポンド超。その結果、小売価格は決して安くない。日本では税込み4万8600円。9月に発売予定の米国でも、小売価格は399ドルになる見込みだ。1000円程度から低価格品があふれる伝統的なドライヤー市場では、最高水準の価格だ。

それでもダイソン社は自信があるようだ。「何十年にもわたり、人々は標準以下のエクスペリエンスを受け入れてきた。誰も違う選択肢を示してくれなかったからだ」と、コンセプトディレクターのスティーブン・コートニーは言う。ダイソン社はそれを変えようとしている。ジムのロッカールーム、美容院、そして家庭で。

(執筆:Elizabeth Paton記者、翻訳:藤原朝子)

(写真:Isak Tiner/The New York Times)

© 2016 New York Times News Service
 

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