東京は、住むには最高、稼ぐには最低 シンガポール・香港になぜ勝てないのか?

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4.日本国内の閉塞感

最後の理由は、日本の閉塞感だ。20年の不況と政治の無策で「何だか長期的に明るい社会像が描けない」という人は多い。そして一様に、香港やシンガポールに私を訪ねる友人が「活気や勢いがある都市はいいね」と口にする。

実は、私は日本出張が大好きで、羽田空港で礼儀正しい通関の人からあいさつされるだけで、サービス精神と礼儀の行き届いた皆さんを抱きしめたくなる(そうすると捕まるので実行してないが)。

レストランの食事はどこもおいしく、サービスも一様にフレンドリーで心遣いが行き届いている。ウエイターの方にちょっと声をかけたり右手を少し上げるだけで瞬時も逃さず走ってきてくれるのは日本くらいである(香港では最低5回は叫び、オーダーした商品の3割くらいは違ったものが運ばれてきて、一度もsorryと言ってもらうことなく、サービスチャージで15%取られていたりする)。

加えて羽田空港を出てタクシーに乗れば、20分の搭乗中、実に20回は謝ってくれる。実際に、羽田から汐留のコンラッドホテルまでの間、「何回すいません」と言うかを数えたところ、何の非もない運転手さんは実に18回も私に謝ってくれた。

過度の礼儀正しさは多少やりすぎ感もあるが、それでも日本での経験を最もスペシャルなものにしてくれるのは、この国に住んでいる人々の、お客さんへの礼儀正しさだ。これは香港やマカオ、上海のビルがひょっとしたら東京より立派になってしまっても、一朝一夕で追いつくことのできない文化的強さである。

東京で勤務した後、香港に移り住んだアメリカ系韓国人の友人は「東京は最高。住むなら東京。だけど仕事でおカネを稼ぐなら東京は最低でやはり香港がいい」と言っている。

これは私もある程度同感のところがある。しかしながら住みやすさとしては世界最高水準の魅力度を誇る都市が、働き先としてますます魅力がなくなっていくのはなぜか。

この残念な謎に関して、海外の視点から見た日本社会について言及しながら、次回以降、読者の皆さんと一緒に考えていきたい。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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