抑えようがない組織のグローバル化--『グローバル・エリートの時代』を書いた倉本由香利氏(経営コンサルタント)に聞く
日本企業に組織のグローバル化という「第三の波」が押し寄せている、と著者は説く。それを乗りこなす主役は「グローバル・エリート」。その役割に日本人の強みが生かせるという。
──グローバル・エリートとは、一般になじみのない言葉ですが。
どこにおいても、さまざまなバックグラウンドの人々の懸け橋として活躍できる人たちのこと。言い換えれば、多国籍の人材が集まるグローバルな組織で活躍できる人たちだ。感受性、理解力、柔軟性、さらに問題解決型思考力の高さからいって、日本人はこのグローバル・エリートになりうるスキルを世界の中で最も豊富に持っている。
──その人たちが第三の波を乗りこなす牽引役ですか。
日本企業の1970年代は「販売のグローバル化」だった。世界に製品を輸出し、日本ブランドを浸透させた。これがグローバル化の第一の波だ。80年代後半からは、第二の波の「生産のグローバル化」に至り、製造拠点が海外に移転していく。そして、現下の第三の波では、会社組織全体がグローバル化することになる。この新しい時代、あるいは新しいステージをグローバル・エリートが牽引していく。
──日本人はグローバル化が得手ではないといわれます。
振り返ると、第一の波、第二の波を民間企業主導で乗り切ったではないか。今までグローバル化を率先してこなしてきているのに、なぜ向かないと決め付けたがるのか。ソニーはGEよりも早く海外販売比率を高めた。この間のたった20年だけのことで、当座、自信をなくしているだけだ。
今や日本には、世界的に必要とされる分野でトップを走る技術が極めて多い。これらの技術を普及させることで、世界で起こっている水不足、エネルギーなどの諸課題や、貧困、病気などの問題をかなりの部分解決することができる。ただ、新しい技術を普及させるには、それを世界標準にし、関連産業を立ち上げていく必要がある。そのためには、世界中の企業や政府に働きかけて、技術の高さをアピールすると同時に、世界各地に拠点を持ち、多様な分野のグローバルな企業を動かして事業開発をすることが重要となる。
これらを可能にするのがグローバル・エリートであり、加えて彼らを十分に活躍させる組織のグローバル化だ。