抑えようがない組織のグローバル化--『グローバル・エリートの時代』を書いた倉本由香利氏(経営コンサルタント)に聞く
──すでに生産・販売のグローバル連携は当たり前です。
組織においても、先進国、新興国を問わず日本人以外の人が中枢に入る動きになっている。研究開発ももっぱら日本だけで行うのではなく、これら事業の上流まで日本人以外の人が手掛けるようにして現地密着型にならないと、海外で売り上げを伸ばすのは難しい段階に来ている。
グローバル化していく波は抑えようがない。いち早く組織のグローバル化を進めないと、その奔流の中で先端企業は勝ち抜けない。
──相手の地域や市場によって、展開形態は違ってきませんか。
たとえばアフリカ市場。中国企業の進出ぶりには目を見張るものがある。ただし、中国の人は最低限といっていい生活をしながら市場開拓をしている。水が何とか確保できるような、とてもホテルとはいえない施設に数カ月泊まって、通信インフラのアンテナ設置をするテレビ番組があった。こういったことが日本人にできるか。
これから大きく成長していくアフリカのような市場については、中国企業でもインド企業でもいいので、まずはそういう形態に耐えられる国々の企業と提携をしながら進出する。高等教育に裏付けられた日本人の企業文化ではやっていけない。同時に、違うカルチャーでも実務能力のあるほかの国の人々が組織の中枢に入っていく形にならないと、日本発グローバル企業の成長はますます難しくなる。
──グローバル・エリートに要求されるスキルも増えます。
必要なスキルは八つに集約できる。異なる環境に育った人の持っている違いを感じる感受性、その人たちが変わった行動を取っても異なる文化や価値観をわかろうとする理解力、それに多様なやり方に合わせる柔軟性。まずこの三つがないと、一緒に働いていくのは難しい。しかし、この三つは日本人の得意とするところではないか。
グローバル化というと、まず英語という話になる。それはそれで正しい。英語ができればアジアの人ともコミュニケーションができる。ただ、それだけでは、グローバルに働いていくためのスキルにはならない。
特に指摘したいのは、日本人は弱いといわれるオーナーシップ、ゼロベース構築力、説明力、さらに粘り強さも同時に必要だということ。