東京は、住むには最高、稼ぐには最低 シンガポール・香港になぜ勝てないのか?

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1. 安い税金

やはりこれか、という感じだが、そのとおりである。まず香港にしてもシンガポールにしても、移ってくる人の大きな理由の1つが税金だ。

日本で社会保障費を含めて50%取られていた人(しかも社会保障費が返ってくる見込みは乏しい)にとって、すべて引っくるめて17%程度というのは驚きの安さである。ただし私の場合、ここ数年、円が対ドルで3割上がったものの、ドルにペッグされた通貨で給料をもらっているため、円建てサラリーは変わらなかった。

しかし、驚いたことに気前のいい某一流コンサルティングファームではエクスパット(本社から海外支社に派遣される社員)として赴任する場合、為替変動分も会社が見てくれるというのだ。

日本からユーロ圏のオフィスに移動したわが友人は、対円ユーロ安で給料が1.3倍くらいに膨れ上がった。私もサラリーの為替ヘッジをしてもらったらよかった、と後の祭りで悔いたものである。

税金の話に戻すが、連日税金の無駄遣いの話ばかり聞かされて、しかも約20年に及ぶ不況のさなか、社会保障改革の道筋が見えないまま税金を上げられる環境というのは、自由に世界中を移動できる高給取りのビジネスパーソンにとって耐えられないだろう。

これはいわば、「オマエみたいなグローバルに活躍できる、税金いっぱい払える金持ちは日本から出ていけ!!金持ちは入国お断りだ!!」と言われているようなものである。

しかしながら、「税金で出ていくやつは出ていけばいい、そんな非国民いらん!」と開き直っている経済音痴の為政者に限って、富裕層が流出し、そうでない人だけが国内に残るリスクを理解もしてなければ責任もとれないのだ。

フランスの友人が、次々と移住

日本国内の狭い視点だけで政策を議論してはいけない。世界に目を開けば、香港やシンガポールをはじめとする世界中の金融都市が金持ちビジネスパーソンを引き付けるための競争を展開しているのだ。

結果的に、世界は、これから稼ぐ若い金持ちを世界から引き付ける都市と、移動できない“そうでない高齢者たち”が取り残される都市に二分化されていく。日本はどちらの道筋を選ぶのだろうか。

実際に、最高税率を引き上げている国からは富裕層が流出しており、最近私の友人のフランス人の多くが、アムステルダムなどのヨーロッパ他都市や、シンガポール、香港に移住している(仏大統領オランド氏の最高所得税率の政策を参考に調べていただきたい)。

よく格差をなくすために最高所得税率や法人税を上げようと訴える人がいる。これは心情的には理解できるものの、結果的には貧しい人がさらに貧しくなるだけだ。国内だけで労働市場や資金の移動が閉じている時代ならまだしも、資本や労働力の移動が自由なこのご時世には逆効果だ。

ただ単に、ミッドタウンのオークウッドに住んでいる金持ちが、香港のエレメンツやシンガポールのラッフルズに移るだけだろう。そして銀座の高級バーがさらに倒産し、そこで働くお姉さんが集う高級ブティックに閑古鳥が鳴くのである。

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