文化はダーティなところから生まれる 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(下)

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――そして、朝まで議論しろと。

そうですね。社会を変えるとか新しい思想をつくろうとか思ったら、クリーンなことだけを見ていてはできません。今風にいえば、ある程度リスクを取らなければならない。弱者の気持ちを考え、誰も傷つけないようにし、正しいことだけを考える。そんな配慮に満ちた人生を送り続けていても、何も出てこないし、文系の学問がいつのまにかそのような「政治的正しさ」に閉じこもってしまった状況をなんとかしたい。

別の観点でいえば、僕は、政府主導のプロジェクトが退屈で保守的なのは当然だと思っているんです。だって政府は、それこそ、「弱者の気持ちを考え、誰も傷つけないようにし、正しいことだけを考える」ことが仕事ですから。だから社会を変えるためには、民間に、いかに変でいかがわしい組織がいっぱいできるかが重要だと思います。面白い人材は、きっとそういうとことから生まれてくる。

――ベンチャーにしても、メガベンチャーの時代ではないということですか?

経済のことはよくわかりませんが、売り上げが大きくなって、メガベンチャーになるにしても、志を同じくする仲間同士が、自由で楽しいことができる空間をつくれる気風をどう残すかが勝負ですよね。

手前みそですけど、ゲンロンみたいな会社が増えることが、日本をアジアで差別化することにもつながると思うんですよ。というのも、中国や韓国はヒエラルキーが強すぎて、こういった形態の会社はなかなか認知されないと思うので。

実は僕は、日本のいいところの一つに、国会議員があまり尊敬されていないことがあると思うんです(笑)。中国や韓国にはまだ生きているヒエラルキーが、日本では壊れてしまっている。だから、たとえ小さな組織でも、いろいろなところに手を出せるし、面白いことができる。ウチのような、小さくとがった組織がいっぱい集まって、新しい流れが生まれたらいいですね。

――小さくとがった組織を率いる「新世代リーダー」が待望されるということですね。

リーダーが必要なことは間違いないでしょう。でも、リーダーなら何でもいいってもんではない。当たり前のことですけど、質が問われます。橋下徹さんも、「大阪維新の会」で地方政治をやっていた頃はみんな期待していたけれど、国政に進出するとなると、国民もメディアも結構冷静ですね。

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