文化はダーティなところから生まれる 知の「新世代リーダー」 東浩紀 思想家(下)
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――では、どうしたら、大局的に物事を見られるようになれるのでしょうか?
それはさすがにわかりませんが……(笑)。
ただ、個人的に大事だと思っているのは「場づくり」ですね。自分の専門領域に閉じこもる内弁慶が多くなったのは、リアルに人と出会わないことも関係していると思う。
僕がいま会社をつくり、『思想地図β』などの雑誌を発行しているのも、そういう場づくりが動機です。「福島第一原発観光地化計画」でワークショップを行っているのも同じ理由。専門領域の異なるコアメンバー7人で合宿するのですが、みなバックグラウンドが違うのだから、イデオロギーも少しずつ違う。それでも、7人で1泊したという事実は大きい。
こうしたベースがあっての意見対立はいいですが、いまはリアルな接触もお互いへの尊重もないまま、「俺のほうが偉い」とか「俺は当事者だから言う権利がある」とか、ぶっつけあっている人ばかり。そうした場から、生産的なアイデアは出てきません。
――若者間の有益な議論を推進するための「場づくり」として、カフェもやられるそうですね。
はい。現在内装工事中で、年明けには「ゲンロンカフェ」という名の店がJR山手線の五反田駅前にオープンする予定です。イベントスペースとカフェが一体化した空間で、そこで、週2~3回、『思想地図β』の執筆者たちに講義をしてもらい、ちょっとしたカルチャーセンターにしようと思っています。また、軽めのイベントなどを行います。
言ってみれば、朝日カルチャーセンターとロフトプラスワンのいいとこ取りをしたようなスペースですね(笑)。若い世代が集まる知的センターになればいいな、と。大学、特に人文系の学部は、知的な場所としては機能していないので。
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