「ほぼ日」は売れ筋を”考えない” 楠木建が糸井重里に聞く(上)
糸井:「永久紙ぶくろ」という、ジッパーもなければ間仕切りもない、長方形のナイロン製の袋もそうです。紙袋のようだけどナイロン製だから「永久紙ぶくろ」。これも僕自身が欲しくて作ったものです。
90年代の半ば、釣りばかりしていた時期があって、そのときに餌の袋だとか、いろんなゴミを放り込めるような袋があれば便利だと思った。商品としては、人に差し上げられるくらいの、ちょっとした袋に発展したのですが。ビニール傘に近い発想でした。
篠田:ここ数年でこそエコバッグが普及しましたが、永久紙ぶくろを発売した2000年当時、こうしたナイロンバッグは画期的でした。
議論の発展を止めるのが僕の役割
糸井:商品開発はけっこう大変でした。開発会議を行いますよね。すると、途中で誰かが必ず、トートバッグのほうがいいんじゃないか、いや肩掛けのほうがいい、なんて言い出すんです。そして放っておくと会議が、「普通のお店に並ぶバッグを作る」方向に進むんです。
楠木:それだと普通のバッグと差別化できない。
糸井:ですからそのときは議論が発展しすぎるのを止めるのが僕の役割でした。できるだけ紙袋に近づけるんだ、余計な機能は全部ダメだと。
篠田:私は『ストーリーとしての競争戦略』の愛読者でもありますが、ほぼ日の特長は、「こんなものが欲しい」という社員の動機が、作り手、使い手を巻き込むストーリーになって、今までにない商品ができ、お客様がその付加価値を喜んでくださることです。
起点はつねに動機であり、それを見失っては絶対にいけない。見失ったら、「もともとは、何がしたかったんだっけ?」と動機に立ち返るようにしています。
楠木:売ったり、発信したりするコンテンツは、「動機が一番」ということですね。絶対にブレない。
糸井:僕がいつもしている「ほぼ日ハラマキ」も、僕自身の強い動機から生まれたものです。11年前に販売を始めたのですが、今では、ほぼ日の主力商品にまで成長しました。今日も着けています。ほら(と、腹巻きを見せる)。
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