試合前にプレゼン!海外スポーツ指導は斬新

一流アスリートも驚く、目から鱗のメソッド

元プロキックボクサーの杉本拓磨(写真中央)は、米国でのトレーニング方法に驚愕したが、そこから得たものも多かったという

米サンディエゴにある格闘家向けのトレーニングジム「アンディスピューテッド・ダウンタウン・サンディエゴ」。ブランドン・ベラやアンディ・ウォン、ヘルマン・テラドなど、格闘技好きなら誰でもなじみのある全米トップ選手たちを軒並み輩出している、知る人ぞ知る名門ジムである。

その一流ジムのドアを、日本でプロキックボクサーとして活躍していた杉本拓磨がたたいたのは、今から7年前のことだ。世界トップクラスのキックボクサーを目指して渡米した杉本だが、このアンディスピューテッドでの経験が、その後の格闘家としての人生を大きく変えることになる。

「自分の目指すファイトを書いてみろ」

どの世界においても一流を目指すのであれば、一度は海外に飛び出した方がいいと誰しも聞いたことがあるのではないだろうか。ただ、海外経験の有効性や、具体的に海外でどういった経験を得られるかについては語られることが少ない。現在、スポーツ選手をはじめ、さまざまな分野において海外を目指す人は多いが、ここでは実際にアスリートがどのような指導を受けているのか、また、それによって選手たちがどう変わるのかを書いてみたい。

さて、27歳にして初めて海外で選手経験をすることになった杉本がまず衝撃を受けたのは、日本と米国での選手指導に対する考え方の違いだ。

日本では、たとえば、ジャブやストレート、フック、右ミドルキックなどトレーナーが理想とする技のコンビネーションなどを正確に再現することが求められるが、米国のジムでは一人一人の選手の個性を最大限に伸ばすことがもっとも重要。そのため、トレーニングの方法やメニューは選手ごとに異なっていたという。

たとえば、対戦マッチが3カ月後に迫ったある日、トレーナーが杉本に突然、紙とペンを渡した。「え!?」。一瞬戸惑う杉本に対し、トレーナーは「3カ月後の試合でどんなファイトスタイルを目指しているのか書いてみろ」と言う。それだけではなく、試合中にどんな技を繰り出したいのか、その技を1ラウンドで何回披露したいのか、さらには観客に対してどのようなパフォーマンスをしたいのかを説明しろというのである。

面白いのは、こうした技やコンビネーションを実際に杉本ができるかどうかではなく、あくまで杉本が観客に対してどういうファイトを見せたいかどうかにフォーカスしている点だ。実際、ジムではその後、杉本が書いた「試合計画表」に基づいて、必要な指導者があてがわれ、トレーニングが行われた。

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