試合前にプレゼン!海外スポーツ指導は斬新 一流アスリートも驚く、目から鱗のメソッド
また、日本だったらムエタイやキックボクシングなどそれぞれの技量を高めるには、それを専門とするジムに行く必要があるが、アンディスピューテッドにはキックボクシングやウエイト、レスリングなどさまざまな競技のトップトレーナーが在籍していたため、すべてのトレーニングを一つのジムで受けられた。つまり、複数のトレーナーがチームとなって、杉本が理想とするファイトの実現をサポートしてくれるわけである。
杉本が驚いたのはプログラムの内容だけではない。一緒にジムで汗を流す選手たちの考え方の違いにも衝撃を受けた。渡米して半年が経ったころ、米国で活躍するトップ選手たちが杉本を練習に誘ってくれるようになった。これは日本では考えられないこと。というのも、日本の格闘技界では上下関係がハッキリしており、一流選手とほかの選手が交わることはほぼないからだ。
一方、米国の選手たちには、言葉も習慣も違う米国に単身で乗り込み、弱音を吐かずに日々淡々と一人で練習をこなす杉本の姿は将来有望に映ったようだ。杉本にとって一流選手たちと練習を共にこなすことは、新たな技術を身に付けるだけでなく、全米トップ選手の技を肌で感じられる貴重な経験で、日本で練習を積んでいたときよりも格段に技能が伸びたという。
中国体育学校での強烈な経験
私もまた杉本同様、海外でトレーニングを受けたことがある一人だ。小学生のころから両親のすすめで卓球を始め、岐阜県の強化指定選手に選ばれたことで10歳頃から中国へ足を運ぶ機会が頻繁にあったのである。
中国での経験はまさに強烈だった。たとえば、上海近くに位置する杭州の体育学校に夏休みを利用し訪れたときのこと。この学校は生徒全員がオリンピックで金メダルを目指しているという一流アスリート養成校だったのだが(私の記憶では当時、卓球競技を行う生徒だけでも男女合わせて50人ほど在籍していた)、小学校一年生であれ、同じミスを繰り返すのであれば、容赦なく竹竿で叩かれていた。
そんな厳しい指導が行われているこの学校で、特にビックリしたのは練習試合の評価。技術の高い選手を評価するのではなく、格上の選手に勝利をあげる選手を高く評価していたのだ。当時、中国・杭州遠征に参加した日本の選手団の中で私は真ん中くらいのレベルだったと思う。当然、現地でも初めは上位グループではなく下位グループに入れられた。
が、ある練習試合でのこと。私がとある中国人生徒を、セットオールのジュースに持ち込んだのを見た体育学校のコーチが、私に中国残留を強く勧めたのだ。おそらく、普段の練習から競争することに重点を置き、また、勝つことにこだわっていたからこそ得られた評価だったのではないだろうか。
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