のぼうの城ーー人間力の時代に

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やがて、本城である小田原城が開城し、小田原城で篭城していた北条氏の氏長からの指示により、やむなく忍城も開城する。結果的に小田原城落城時まで持ちこたえた支城は忍城だけだったのである。“のぼう様”を野村萬斎が熱演するほか、佐藤浩市、山口智充、成宮寛貴らが城を守る侍大将を演じるなど俳優陣は堅い。

本作で城主長親の「人間力」が光る。これは今、ビジネスパーソンに最も必要とされる能力ではないだろうか特に、経済の構造改革が再度注目を集めてきているが、個人レベルでの改革も必要になってきている。それも単に資格を取ろうといったものではなく、総合的な人間の力(魅力)である「人間力」が注目を集めている。「人間力」の定義はさまざまあるが、筆者は①知識量、②コミュニケーション力、③自己管理力、さらに④哲学(生き方)があると考えている。これはまさに自分自身を企業と見た場合の経営戦略ともいえる。

特にこの忍城が、圧倒的な劣勢を持ちこたえたのは、城主長親の人間性にその解ある。特に②コミュニケーション力と③自己管理力、④哲学の部分が、人間性といえるのではないか。

確かに、①の知識量も仕事をするときには本当に大事であるが、それだけでは人間関係がうまくいかない。縦社会が強い会社では可能かもしれないが、人間性に問題があれば本当の仕事はできないし、生きていくこともできない。会社を辞めていく人の多くが、収入面ではなく、人間関係、すなわち人間性が原因となっていることが多いという。

  
本音で言えば、人を動かすのも最後はその人の「人間力」ということになるのではないか。一言でいえば、「嫌な奴のサポートはしたくない」ということ。

「情けは人の為ならず」という言葉がある。最近では、情けをかけるとそのかけられた人は甘えてしまい、その本人にとってよくないと考える方も多いようである。しかし、その本当の意味は、人に情けをかけるのは、その人のためになるばかりでなく、やがては巡り巡って自分に返ってくる。人には親切にせよという教え、なのである。筆者も本当にそう思う。

筆者は、この人間力こそ学校の教育で小さい頃から教えるべきと思っている。その中でも、本当に大事なのは人間性と考えている。人間力、そして、人間性が日本全体で強まっていけば、日本の経済力がさらに強まっていくと考える。

実際、宿輪ゼミの生徒には、経済学の知識も大事だが「最後は人間性だ」ということを徹底的に指導している。

11月2日公開

宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)

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しゅくわ じゅんいち / Junichi Shukuwa

帝京大学経済学部教授・博士(経済学)。1963年生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒。富士銀行、三和銀行、三菱東京UFJ銀行を経て、2015年より現職。2003年から兼務で東大大学院、早大、慶大等で非常勤講師。財務省・金融庁・経産省・外務省、全銀協等の委員会参加。主な著書に『通貨経済学入門(第2版)』『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門〔2020年版〕』(東洋経済新報社)、『円安vs.円高(新版)』『決済システムのすべて(第3版)』『証券決済システムのすべて(第2版)』『金融が支える日本経済』(共著:東洋経済新報社)などがある。

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