① 匿名性
本来、自分の利害とは関係ない制裁は、敵を作ることを意味し、復讐されて、自分の生存を脅かす可能性もある危険を伴う行為だったわけだが、インターネット上では、自分の正体を明かすことなく、報復を恐れることもなく「制裁」ができるようになった。
② 即時性
昔はそうした憤りを感じても、その発露の場はほとんどなかった。通常、そうした怒りはしばらくすれば、忘れてしまったり、収まるものだが、インターネットのように瞬時に書き込め、送ることができることにより、瞬間的な怒りがそのまま発信されてしまうようになった。
③ 書き言葉
通常、書き言葉は話し言葉より直接的になる傾向が強い。相手と面と向かって話す場合は、その感情に気遣い、マイルドな表現になるが、顔も合わせずに書いて送りつけるメッセージは語気が強いものになりやすい。
④ 距離
会って話してみたら、「意外にいい人だった」。こういう経験はあるかもしれない。会うこともなく、対面で相手の言い分も聞けないネット上では、誰かの、表層的な行動や言動の「異形」を見た時、本能的に不快感を覚え、「排除すべき」という直感が働きがちだ。
⑤ 群集心理
人は誰でも誰かに認められたい。「正義の味方」になりたい。自分自身を「正義」と信じ、「悪人」と思い込む相手に対し、「制裁」を加えようと書き込むと、同じような考え方が他にも大勢いて、そういう人たちから同調を得ることができる。強い自己肯定感を覚え、孤独から解放された気持ちを感じられる。
ネットは現代の公開処刑場になっている
まさに、インターネット、ソーシャルメディアは、集団ヒステリアに満ちた、現代の公開処刑場と化しているというわけだ。つまりは、人間の本質はそれほど変わってはいないが、インターネットという高速増殖炉によって、その特質がさらに顕在化しているということなのかもしれない。
また、4月に発売された『ネット炎上の研究』という本によれば、ネット上にまん延しているかのように見える炎上に実際に参加しているのはネット利用者の0.5%でしかない、という衝撃の結果だった。
一つの炎上事件あたりでは0.00X%に過ぎず、人数では数千人程度だ。その9割以上が一言感想を述べる程度で、当事者に直接攻撃をする、複数回書き込みをする人などはほんの一部、つまり、人数にすれば数十人~数百人に過ぎないというのである。
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