熊本地震に「不謹慎叩き」が蔓延する真の理由

人間の「本能的制裁欲求」が暴走を始めた

不倫の被害者ではない他人が、不倫の当事者を糾弾したり、被災者でもない人たちが、被災者に代わって、「不謹慎」と声を上げる、といったようなことだ。アメリカでは、この「非当事者による制裁」がネット上での「非寛容」の根っこにある、として、その分析・研究が進んでいる。なぜ、全く関係のない第三者が、怒りののろしを上げるのか。

そもそも、生物学的にみれば、自分に利害のないことで、他者に怒りを覚えるという行動はチンパンジーなどにも見られない人間特有のもので、生後8カ月の赤ん坊にさえ、そうした行為は出現するという。また、脳科学的に見ると、人は悪事をしたとみなす誰かを罰するときに、快感を覚える生物らしい。

2004年8月の『Science』誌に発表された研究によれば、脳の動きを画像で見ると、人を罰するときに、脳の報酬系が活発化するのが確認された。つまり、心理学的に報われた、と感じるというわけだ。ドラマや映画で、悪者が成敗されることを願い、達成されれば、すっきりした気分になるのもそういった本能に基づく反応だろう。また、中世、近代の公開処刑の場で、処刑される人を全く知らない人々が、快哉を叫んだのも、同様の文脈で説明できる。

こうした「制裁」は人類学的にみても、「必要なもの」だった。裁判制度や警察制度も発達していない時代には、「悪人」は村や地域で独自に裁く必要があったからだ。まさに「村八分」は人間の進化の上で、彼らの「正義」と「秩序」を守るための社会制度だったのだ。

他人を罰するのは、自分の正義を示すため

"炎上書き込み"をする人の心は「本能的制裁欲求」に支配されている(写真:バタコ / PIXTA)

今年2月、イェール大学の研究者は、「人は、自分たちが信頼される人間であると証明するために他人を罰しようとする」という論文を発表した。クジャクの羽や鹿の角のように、自らの存在価値を誇示し、自分たちが正義であると声高に宣言するための行為だというのだ。

こうした人間の「本能的制裁欲求」がインターネットという怒りの集積・増幅装置に乗り、暴走を始めたというのが、現代の炎上のメカニズムではないか。特に、インターネットを通したコミュニケーションの持つ5つの特徴が、怒りの増殖を加速させている。

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