TDLを抜いたUSJ、いったい何を変えたのか 「ハリポタ」だけが来客増の理由ではない!

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かつてひっそり開催されていたゾンビのイベントのビデオを見たとき、ひらめいたのです。パーク内に何百体もゾンビを放ち、パーク全体をお化け屋敷化したら面白いのではないかと。このイベントは初年度から大当たりしました。今や関西では「ハロウィーンといえばUSJ」と言われるまでに定着しています。2015年10月にUSJがTDLを抜いた原動力となったのも、この「ハロウィーン・ホラー・ナイト」なのです。

パーク全体をお化け屋敷化した「ハロウィーン・ホラー・ナイト」

2012年には、親子連れをターゲットとした「ユニバーサル・ワンダーランド」をオープンしました。それまでのUSJは、客層に大きな偏りがありました。大人向けのアトラクションばかりで、小さい子供やそのお母さんが楽しめるアトラクションが少なかったのです。「映画のテーマパーク」にこだわるあまり、大きな客層を取り逃がしていたのです。

こういった社内にはびこる「差別化という名の方向性を誤ったこだわり」を正していくのも、マーケターである私の仕事でした。

設備投資が少ないヒット作を連発

さらに2013年には、逆走するジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」を企画しました。既存のジェットコースターを後ろ向きに走らせるだけというシンプルなアイデアですが、意外と誰も気がつかなかったコロンブスの卵的発想です。

このアイデアをぶち上げたものの、前向きに走らせていたものを後ろ向きに走らせるというのは前例のない未知の領域です。人体への影響は大丈夫なのか、認可取得はできるのかなど、さまざまな障壁が想定されました。しかしふたを開けてみれば、制作はスムーズに進みました。技術サイドが卓越した技術と経験と情熱をもって取り組んでくれたからです。その結果、最高で「9時間40分待ち」という記録的ヒットにつながりました。

後ろ向きジェットコースターのアイデアが優れていたのは、設備投資費が極めて少ないという点です。既存のコースに後ろ向きに改良した車両を走らせるだけで済む。これはハロウィーンのゾンビにも言えることで、ゾンビは何百体雇おうが設備投資費は基本的にゼロです。こうして少ない投資でヒットを連発して食いつないだことが、450億円もの巨額投資を可能にし、「ハリー・ポッター」の大成功につながったのです(このあたりのストーリーは、拙著『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』に詳しく書きました)。

こうした奇策ばかりが注目されがちですが、USJの最大の変革は、会社としての組織改革・意識改革にあったと思います。

最近、よく聞かれるのです。「森岡さんはUSJの何を変えたのですか」と。

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