iPhoneの「i」は、どうして小文字なのか? 1文字で変わるコミュニケーション

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「iPhoneのiの意味は、『私』で、自分に合ったカスタマイズができるんだよ」という説明を聞いたことがあります。

しかし調べてみると、実はまったく違っていたりします。正解は、スティーブジョブスがiMac発表のときに、internet(インターネット)、individual(個人的な)、instruct(教える)、inform(知らせる)inspire(ひらめかせる)の意味合いを持つと説明しています。

戦略5:自己解釈を生みやすい

では、なぜ上記の誤解が生まれたのか。それは、人は時に「正しい情報」よりも「それっぽい嘘」に流されるものだからです。

「iPhone」の「i」が何かわからずとも、「iと言えば私だろう」といった文脈がいつのまにかでき、はじめの例のような「まちがった解釈を本当と思う」ことが発生します。

これはコミュニケーションにおいては、時によい方向に働きます。理由としてはその「謎」が「興味」へと繋がるからです。みんなの想像力を高めるような仕掛けやギミックを仕込みましょう。

たとえば『頭文字(イニシャル)D』という車のマンガがありますが、これも最後まで「D」が何かというのが明かされず、ドリフトかドライブかといった憶測が飛び交ったのです。

自己解釈が生まれる仕掛けが込められているか。

この点に注意して名前やタイトルを設計するだけで、引き合いはぐっと変わってきます。

「違和感」「口当たり」「短さ」「王道単語」「自己解釈」。少しの気遣いで伝わり方はぐっと変わってきます。

そしてiPhoneに限らず、「自分の知っているフレーズ」や「思わず覚えた言葉」は、必ず「なぜ自分の脳に定着したのか」という考える癖をつけるといいでしょう。

そういった有名になった成功例を自分のなかにノウハウとして蓄積し、次はあなたの頭のなかから周りに影響をあたえる強いコミュニケーションを生み出していきましょう。

内田 伸哉 Yahoo!ブランドマネジメント室室長

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うちだ しんや / Shinya Uchida

Yahoo!ブランドマネジメント室室長。慶應義塾大学大学院理工学部卒業。大学院では、信号処理やプログラムを研究。国際学会での論文発表を通じて「言葉こそが人を動かすプログラム言語」だと強く感じ、方向性を180度転換。電通に文系就職。小学生時代から、語学関連の成績はつねに赤点評価だったが、過去30年分の広告やキャッチコピーを1年かけて研究し、コピーライターとなる。現在はヤフーで言葉を中心とした企業のコミュニケーション・ブランディングに従事。

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