現地で数々の交渉と決断を経てマイプロジェクトを完遂することで得られる達成感はひとつの大きな醍醐味だが、ひとり旅のメリットはほかにもある。
旅先では、普通に生活していてはまず出会うことがないような人たちと巡り合う。その邂逅が思わぬ展開をもたらすことがある。
小林さんは以前、瀬戸内海に浮かぶ島、香川県丸亀市讃岐広島にある人口25人の集落、茂浦で休日を過ごしたことがある。この小さな集落での出会いから、昨年、茂浦でオープンした古民家宿「ひるねこ」の主要メンバーとして立ち上げにかかわることになった。
「2014年の5月に、茂浦に行きました。その時は集落の方々と普通にテーブルを囲んで、島のモノを食べたりして過ごしていたんですが、島がこのままでは無人島になってしまう、自分たちは何もしなくていいのか、という話を聞いて、東京に戻ってからも何かできないかなと考えていました。島には宿がないのですが、立派な空き家はたくさんあったので、宿を作ったらどうかとシンプルに思い立ち、翌月、島に戻って話をしたら、やろうということになったんです。1泊で帰る予定だったのですが、その日のうちに使える空き家が決まったこともあり、結局5泊もして、島のいろいろな人に会って話をしました」
香川から愛媛につながる“旅のマジック”
古民家を改修して宿を作ろうと決めたはいいが、小林さんも島の人たちも宿を作った経験はもちろん、宿で働いた経験すらない。
どんな宿にするのか、集落の人たちに説明をして、合意を得て、みんなを巻き込みながら、運営方法を考え、許認可の手続きなど煩雑な事務作業も進めなくてはならない。その過程で島の人たちとのすれ違いが生まれ、時には口論もした。そのたびに涙を流しながら「もうこのプロジェクトから離れよう」と思ったそうだ。それでもなんとか踏みとどまり、宿のオープンにまでこぎつけた。
そして最近、広島の尾道から瀬戸内海のしまなみ海道を通って愛媛県の松山に行った時、ローカル食堂で新たな出会いが生まれた。
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