晩酌を愛する人の中には、「マイグラス」や「マイタンブラー」をお持ちの方も多いと思うが、特に酒通に愛用者が多いといわれるのが、「錫(すず)」の酒器だ。人気のワケは、酒を注ぎ一口飲んでみればわかるはず。なぜかいつもの酒も品よくマイルドになり、ワンランクアップしたような味わいに変化するのである。
そんな魔法のような錫を用い、伝統的な技法で器を製造する企業は、現在全国で15社ある。そのうち大阪府にある5社が生み出す品々は、経済産業大臣より伝統的工芸品「大阪浪華錫器」の指定を受けている。中でも順調に売り上げを伸ばし、業界内で3分の2のシェアを誇るリーディングカンパニーとなっているのが、「大阪錫器」だ。食器や茶器、花器など商品は多岐に渡るが、とりわけ売れているのが酒器であり、若い世代からも支持を集めている。
一口飲めばわかる、マイルド効果
「これを巾着に入れて居酒屋へ行き、お酒を楽しんでいる人もいます」。そう話すのは、コンタンの鈴木正晴社長だ。同社は、職人の手によるこだわりの逸品を集めたショップ「日本百貨店」を運営している。ここで最も男性ウケする商品が、大阪錫器の酒器だという。
中でも猪口が人気で、若い女性が男性へのプレゼントとして購入するケースが多いそうだが、男性による自分への「ご褒美買い」もよくあるとか。特に「おかちまち店」は40~50歳代のビジネスマンの来店も多く、常連男性が訪れる度に欲しそうに酒器を見つめ、ある日、意を決し購入していったりするらしい。
デザインもシンプルで素敵だが、人気の秘密は、やはりまず錫そのものの魅力にあるようだ。3年ほど大阪錫器のタンブラーを愛用しているという鈴木社長は、こう言い切る。「味が全然違う。飲み物がまろやかになる」。
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