酒が一気に美味くなる!大阪発の「魔法の器」 エジプト時代からある「あの金属」がカギ

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予想以上の売れ行きで、月8000個売れた時もある。今や年間約2万~3万個は売れる定番のヒット商品だ。特に父の日の前などは注文が増えるが、ロゴ入り対応していることもあり企業の記念品需要も大きく、年間を通じてコンスタントに売れるそう。主な販路は百貨店だが、5年ほど前には、楽天の総合ランキング(デイリー)で10位に入ったこともあるなど、ネット通販でも一定の需要を築いている。

人間の手で使うモノは人間の手で作ればいい

漆産地とコラボした「錫漆」も人気。こうした新しい試みは常に考えているという。

このほかにも、「さざ波模様」という新たな模様を開発したり、全国の漆産地とコラボして「錫漆」という商品を生み出すなど、常に新しいことに挑戦し、「発信」を心がけている。錫の魅力を伝えるため、取材も断らない。また、問屋だけでなく百貨店とも情報交換を行うなど、流通対応も変えてきた。

「1秒1秒が勝負」と、コスト意識も非常に高い。たとえば、要となる現場では、道具の置き場所から完成したものを並べる場所まで、効率的な動線を緻密に考え抜いたレイアウトを採用しているそうだ。

全て手作業。写真は、「ろくろ削り」の様子。液体にした錫を型に流し込む「鋳造」の後、このようにろくろを使って形を整える。

人材育成にも力を注ぐ。実際、現場には若手が多い。現場を担う20人のうち、最年長は79歳で、50~60代と続くのだが、女性を含む20~30代が半数を超えているのだ。全国の職人技術が後継者不足で悩む中、これだけ若年層が厚い工房は珍しい。「今年に入り、自分が育てた30代が初めて伝統工芸士に認定された!」と、とてもうれしそうに話す今井社長は、こう考えている。「技術が次世代につながり、伝統となる。次の世代がこの世界でやっていけるようにしておきたい」。

伝統工芸分野に限らず、あらゆるモノ作り企業にとって参考になるお話を聞かせてくださった今井社長だが、最後に温かい口調でしみじみと語った、職人ならではの言葉が印象に残る。

「金属なのに手になじむ、錫のやわらかさが好き。人間が手で持って使うものは、人間が手作りしたらよいと思っています」。

モノがあふれる社会へのひとつのアンチテーゼともとらえることができるが、筆者には、「もっとシンプルに考えて生きたらいいんじゃない?」という、優しい問いかけのようにも聞こえた。 

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