日本人シェフ、なぜ今フランスで人気なのか

新たな食のムーブメントを日本人が牽引

アブリで腕をふるう沖山克昭氏

ただ、どちらもフランスに来て著名シェフの下で働き、その伝統とテクニックを見事に吸収してきたのは同じだ。「フランス料理で日本人をうならせることはできる。でも僕は、フランス人にフランス料理を作りたい」と、「Abri(アブリ)」の沖山克昭シェフ(39)は語る。神奈川出身の沖山も、日本でフランス料理の基本を学んだ後、パリの一流レストラン「タイユヴァン」や「ラ・ターブル・ド・ジョエル・ロブション」で修行した。

パリで日本人シェフの活躍が目立つようになったのは、最近のことではない。ル・フーディングのアレクサンドル・カマス編集長によれば、1990年代にも何人かの日本人シェフが、ミシュランの星付き超高級レストランの厨房を任されていた。

新しいムーブメントに乗る日本人シェフ

だが、新しい世代の日本人シェフたちは、パリのレストラン文化に新風を巻き起こす「ビストロノミ・ムーブメント」の一角をなす。「ビストロノミ」とは、ビストロ(大衆食堂)とガストロノミー(美食家)を合わせた言葉。格式張らない小ぶりなレストランで、超高級店並みの洗練された料理を楽しもうというのだ。

ビストロノミの店は、ほどよく使い込まれた雰囲気で、ギャルソンもカジュアルな服装であることが多い。彼らは目の玉が飛び出るほど高い最高級ワインではなく、聞いたこともない、でも驚くほどおいしいビオワインを勧めてくれたりする。

こうした野心的かつ手頃な価格のレストランは、料理がわかる若い客を育て、パリに新しい食文化を生み出してきた。いまパリで最高の料理のいくつかは、若者が集うにぎやかなレストランで見つかるのだ。

このムーブメントで日本人シェフは不可欠の存在となっている。パリで最も話題のレストランの多くが、彼らに厨房を任せている。「この3年ほどで急増した」と、カマスは語る。ル・フーディングの最新版には、日本人シェフのいるレストラン40軒を紹介した地図が付いている。このうち28軒がフランス料理店だ。

料理でパリシャンの支持を勝ち取るのは容易ではない。なにしろこの国で、食事は生きるために必要なことではなく、喜びの源であり、アイデンティティの重要な一部だ。ユネスコは2010年、フランス料理(食前酒から始まる4皿以上のコース料理)を無形文化遺産に登録した。

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