金融政策や財政政策は根本問題を解決しない

対症療法でむやみに薬を飲むべきではない

5月下旬に予定されているG7サミットでは、安倍総理はホスト国の首相として議論を主導する立場にあるため、3月から「国際金融経済分析会合」を開催して、内外の有識者との意見交換を行っている。会議は非公開のため詳細は不明だが、何人かの有識者が2017年度に予定されている消費税率の10%への引き上げを延期すべきと発言したと伝えられている。

安倍総理は景気下支えのために2016年度予算の前倒し執行を指示しており、年度半ばには補正予算によって事業費の追加が必要になることは確実だ。

かつては各国ともに財政政策を使った景気刺激を活用していたが、財政政策の多用は慢性的な財政赤字を生みやすく、次第に景気平準化には金融政策の使用が優先されるべきだという考え方が広まった。

そうした中で日本は他の先進工業国に比べれば財政状況が良かったこともあって財政政策による景気対策が利用され続け、1990年代初めにバブル景気が崩壊した後の景気刺激でも多用された。当初は公共事業の増加による需要の追加が行われ、次いで1994年分所得税・個人住民税の特別減税、1995年度以降の制度減税、1999年度の恒久減税、地域振興券の発行などによる消費の刺激が試みられた。

財政出動による景気刺激策で赤字が慢性化

しかし、このような大規模な財政政策による景気刺激でも日本経済を安定成長軌道に復帰させることができなかったのは金融緩和が不十分だからだという主張が力を増し、ゼロ金利や量的緩和、量的・質的緩和といった非伝統的金融政策が採用されるに至った。今また、非伝統的金融政策では経済を復活させることはできないので財政政策が必要だという議論になっているのは、再び振り出しに戻ってしまったかのようだ。

政府・日銀はデフレ脱却を目指してきたが、財政・金融政策による刺激によって2005~2008年頃や、2013~2015年頃のように、ある程度の期間、物価を上昇させることはできたものの、持続的に物価が上昇を続けるという状態をつくりだすことはできなかった。

物価が下落を続けるデフレが引き起こす問題に注意が集まった結果、ある程度の物価上昇を作り出しさえすれば日本経済の抱えている問題が解決するかのような議論が横行した。そもそもなぜ日本経済を回復軌道に乗せることができないのかという問題が放置されてしまった。

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